モーニングをはじめ、名古屋が全国に誇る喫茶文化。名古屋の喫茶店をまとめた、好評シリーズ『名古屋の喫茶店』(リベラル社)の完全版が発売中です。喫茶店好きの編集シミズが、名古屋で活躍する編集者の大先輩である、著者の大竹敏之さんに、本にまつわる様々なことを聞いてきました!
大竹敏之
愛知県常滑市出身で、名古屋在住のフリーランスライター。名古屋めしと中日ドラゴンズをこよなく愛する。食べ物や観光スポット、珍名所など、自身の地元・愛知の魅力を全国へ発信中。
大竹さんが名古屋の喫茶店に注目し、出版しようと思ったきっかけについて教えてください。
もともと喫茶店の本を出したいと思っていた訳ではないんです。万博の翌年の2006年から、『オールアバウト』というWebサイトで、「名古屋ガイド」という形で、観光やグルメの記事を書くようになって。喫茶店の記事を書くと、PV数がやたら良いんですよ。以前からライターの仕事をしている僕にとって喫茶店は、あくまで取材対象の一つでしたね。ヘビーユーザーではなく、ごく一般的な利用者の一人で。でも、「コメダ」とかに行くとたいてい賑わっているから、どうしてこんなに人気なんだろうと、素朴な疑問は持っていましたね。ちょうどその時、ちょっとお付き合いがあった「リベラル社」に、別の企画の売り込みに行きましたが、あっさり却下されまして(笑)。その後、社長と世間話をしていたら、「大竹さん、喫茶店に興味ないの?」と向こうから質問されたので、Web記事の話をしたら、「よし、じゃあ喫茶店の本を作ってみよう!」という話になりました。それが、すべての始まりでしたね。最初の『名古屋の喫茶店』の制作期間は、半年くらいかな。一からリサーチして、作っていた感じですね。ちゃんと調べると、名古屋は独特の喫茶文化が根付いていて。僕自身も名古屋をテーマに仕事をしているので、喫茶店が他の街にはない魅力だったり、重要コンテンツというのを、取材をしながら改めて気付かされましたね。
『名古屋の喫茶店』(2010年)、『続・名古屋の喫茶店』(2014年)、『名古屋の喫茶店 完全版』(2019年)と、この約10年で、肌で感じた変化はありますか?
そうですね、変化が著しい10年だったと思います。特に、2014年以降の4年くらいの間が、激動の年だったと感じています。それまでは、“喫茶店=需要が減りつつある斜陽産業”というイメージしかなくて。その間で「コメダ」の全国展開があったり、「コメダ」のスタイルを模した「星乃珈琲店」の人気が急上昇したり、外食産業の中でも喫茶店が唯一の成長株で、ちゃんとしたビジネスになるという見方にガラッと変わった4年間だと僕は捉えています。近しいところで言うと、
「コーヒーハウスかこ 花車本店」(国際センター) は昔からの老舗で根強い人気がありましたが、今はさらに若い女の子たちが行列を作っていて、10年前には想像もつかなかった風景ですね。