静岡出身のADAM atさん、7thアルバム『Daylight』リリースインタビュー!
#インタビュー

2021.8.12thu

静岡出身のADAM atさん、7thアルバム『Daylight』リリースインタビュー!

静岡出身で、ピアノインストシーンのトップランナー・ADAM atさんが6月23日に新アルバム『Daylight』をリリースしました。ピアノの美しさをストレートに堪能できる曲から、「Jジャズ」の枠組みにとらわれない新感覚の曲まで、その表情はさまざま。9月からは名古屋を皮切りに全国ツアーもスタートするということで、本作の魅力をたっぷりと伺いました!

静岡出身のADAM atさん、7thアルバム『Daylight』リリースインタビュー!

7thアルバムのリリースおめでとうございます!ADAM atさんにとって今回のアルバムは、どんな一枚になりましたか?

今まで「Jジャズ」というジャンルで活動してきたんですが、今回、そのジャンルから少し自分が抜け出したようなアルバムになったかなと思っています。「Jジャズ」はそのジャンルを好きな人にしか聴かれないイメージがあって、「ジャズ」って聞くと、やっぱり構えてしまう方が多いんですよ。なので、大衆娯楽のようにどんな人にも聴いてもらえるアルバムにしたいなと思って、「Jジャズ」いうよりは「ロック」というジャンルになったのかなと思っています。

昨年はコロナ禍の影響も大きかったのではないかと思いますが、いつも楽曲はどのように作られていくんでしょうか?

まずは、家でピアノをめちゃめちゃにでたらめに弾くんです。基礎練習から始めるんですけどだんだん飽きてきて、ずっと弾いていると、たまに「おっ」というメロディが出てくるので、ボイスメモで録っておきます。外出中に浮かんできたものはその場で歌ったり、ピアノのアプリで弾いたりして録っておくんです。それを毎日繰り返すような感じで、あとはそのメモをパズルのように組み合わせていく感じですね。その後、ドラムやギター、ベースなど、全パートを打ち込んだデモを作って、メンバーに渡してレコーディングをするという流れです。今回の制作は、コロナの中で録り溜めておいたものが結構あったので、1月の後半から2月の頭にかけての2週間くらいで10曲を作りました。

アルバムタイトルの『Daylight』は、アルバムの中の曲名でもありますが、このタイトルになった経緯は何ですか?

去年からコロナで世の中が暗い中でね、この音源で日が差したらいいなって……そんなことを言えたら本当はいいんですけど、そうじゃなくて(笑)。私の母が栃木県出身でして、栃木と言えば「日光東照宮」、「日光」、「日の光」…で、「Daylight」となりました。なんで『Daylight』なのかというと、同じタイトルのホラーゲームがありまして、実は1stアルバムからずっとホラーゲームからタイトルを取っているんですよ。2ndアルバムは、父が北海道出身なので、「時計台」で『CLOCK TOWER』、このタイトルのホラーゲームもあるんですよ。4thアルバムの『サイコブレイク』 は、このアルバムで「最高にブレイクしたいから」という意味で付けました。ダジャレかい!と突っ込みたくなりますよね。ただ全部こじつけてるんです(笑)

タイトルはダジャレだったんですね(笑)リリースから一カ月が経ちましたが、周りの反響はいかがですか?

良く言えば「これはADAM atにしかできないな」、悪く言えば「情緒が不安定」というような感じですね(笑) 曲の振り幅も本当に大きいので、本当にジャンルを超えて楽しんでもらいたいと思っています。ジャズとメタルはそれこそ水と油、みたいな関係ですが、「カルラテン」や「ケイヒデオトセ feat. Benji Webbe from SKINDRED」という曲があったおかげか、ラウドロックのポータルサイト『激ロック』さんから初めてインタビューしていただく機会もありました。


一曲目の「カルラテン」は、ほのぼのとしたジャケットのイメージの予想を覆す、新感覚のサウンドが印象的でした。「ケイヒデオトセ feat. Benji Webbe from SKINDRED」は、イギリスのラガメタルバンド「Skindred(スキンドレッド)」のBenji Webbe(ベンジー・ウェッブ)さんをゲストボーカルに迎えた一曲ということで、この曲は、どういった経緯で作られたんでしょうか?

これは去年の確定申告の時、領収書の山に埋もれながら、「これも経費で落としたい…あれも経費で落としたい…」という気持ちから生まれた曲です(笑)。「経費」と「Hey!」がちょっと似ているんですよ。これをライブでお客さんと「経費!経費!」と言ったら面白いんじゃないかと思って、そんな曲を一回作ってみたかったんです。そのあと、別の曲を作っているときに、ピアノの低音を使ったリフが生まれたので、そういえば「経費で落とせ」って曲のネタがあったなとミックスして完成しました。ここまでやったら、メタルの人に「経費!」って言ってほしい。せっかくだったら行けるところまで行こうと思って、ビクターの洋楽部の担当が海外のメタルバンドをリストアップしてくれた中にSkindredがあったので、これはぜひお願いしたいと思って実現しました。来年の確定申告の時には、みなさんにこの曲をぜひ頭の中に浮かべてもらいたいですね。

アルバムの中で要になっているなと思ったのが「猫と竜」で、こちらは原作が小説のファンタジー漫画『猫と竜』から着想を得たと伺いました。この楽曲が出来上がった経緯を教えてください。

私は重度の猫アレルギーで猫が飼えないので、せめて自分の作品の中で猫を飼ってたらな、という思いで、今まで出したアルバムは全部、主人公を猫にしていまして。それで「猫」と名の付くものに弱いのと、本を読むのも好きなので、原作も読んでいたんです。それで、せっかくなので、ジャケットのイラストも『猫と竜』の方にぜひお願いしたいとオファーしました。『猫と竜』はファンタジー小説なんですが、異世界モノとかすごく好きなんですよ。異世界モノって、家に居ながらにしてまるで自分が異世界の主人公になった感覚を味わえるじゃないですか。僕も自分の音楽で、この曲を聴いたら普段の公園や路地がちょっと異世界のように感じてもらえたらいいなと思って作りました。

時にシリアスな展開もあり、RPGや童話的な世界観を感じました。パーカッションとヴァイオリンを効かせたサウンドも印象的でしたね。

まさに、RPGに出てくるような辺境の村をイメージしました。ヴァイオリンソロのあと、ピアノとパーカッションだけになるパートがあるんです。ヘッドホンで聴いていただくと、ピアノは両耳から聞こえるんですけど、カスタネットとトライアングルは音が交互に回る、“立体音響”の仕掛けがあったりします。

少し和のテイストも感じさせる「URAMICHI瓢箪いろは坂」は、スリリングな展開が好きでした。

この「いろは坂」というのも、日光の前にある坂のことでして、「瓢箪」も栃木県の名産なので、これもある意味、栃木の曲でもありますね。「いろは坂」と聞くと私たちの世代は、『頭文字D』という作品を思い浮かべるんですが、僕の下の名前が“大悟”という名前なので、僕もある意味『頭文字D』なんです。なので、そんな疾走感のある曲にしようと思って、ベースとドラムの掛け合いのパートで走っているような雰囲気を出しました。「URAMICHI」は、ドラムのハイハットを裏打ちしているので、そのリズムをもじって入れています。

アルバムを締めくくる「Remember The River」は、ヴァイオリンとのハーモニーが素敵で、鳥のさえずりのようなサウンドも入っていて、牧歌的で癒される曲ですね。

これも栃木県に“思川”という川がありまして、思川を直訳したら、「Remember The River」なんじゃないの?と付けたタイトルで、またダジャレかい!という(笑) 望郷の念に駆られる「スタンド・バイ・ミー」や「カントリー・ロード」のようなイメージで、子どもの頃の夕暮れの帰り道を思い出しながら聴いてもらえるとうれしいですね。途中で鳥のさえずりに聴こえるパーカッションを入れているんですけど、そこにも立体音響の効果を入れています。立体音響を入れると、スピーカーで聴くよりも音がもっと近くて、頭の中で鳴っているようにも聴こえるんですね。去年、コロナでライブが全然できない時期があったので、音源が楽しいものになったらいいなと思って、聴くときの楽しさを取り入れてみました。

「静岡からインストゥルメンタル文化を全国に発信!」と掲げたラジオ番組「ADAM at の詞がないラジオ」も担当されていますが、改めてADAM atさんの思う、インストの魅力を教えてください。

人間は好きか嫌いかの二つに分かれるんですけど、どちらでもない「興味がない」というものが結構あるんですね。電車とかマンホールとかそういうものを好きな人もいますが、普通の人からしたら「興味がない」もので、われわれのインスト文化も「興味がない」というところにいやすいんです。興味がないと、ただのBGMになってしまう。ただ、興味を持つと、テレビやラジオでかかっている曲に耳を傾けて、引っかかるようになる。昨日まで興味のなかったものに今日から興味を持つようになったら、多分少しだけ人生が楽しくなると思うんです。ぜひBGMの先にあるものを気にしてもらえると、インストが楽しくなると思います。

9月からは名古屋を皮切りに全国ツアーもスタートするということで、どんなライブになりそうですか?

とにかく去年は、ツアーへ行けるかいけないかわからない状況で不安も大きい中、リモートでリハーサルをしていました。今年はツアーに行くつもりでリハもできているので、それだけでもずいぶん前向きな気持ちでいられていますし、9月がどんな状況になっているかはわかりませんが、たとえどんな環境であっても皆さんを楽しませることができる自信があります。昔の大物ミュージシャンの歌詞で、「探しものは何ですか? 見つけにくいものですか? カバンの中も つくえの中も探したけれど見つからないのに まだまだ探す気ですか? それより僕と踊りませんか?」って。後輩が言ってたら、ブチギレる案件なんですよ。でも、今はライブで声が出せなかったり、距離を保ったりといろんな縛りはありますが、インストはそもそも声を出さない音楽なので、井上陽水さんの言葉を借りて、「それより僕と踊りませんか?」と言いたいです。本当に名古屋が第二のホームだと思っているので、東海のバンドとして一緒に応援してくださったらすごくうれしいです。

2021.06.23リリース
ADAM at『Daylight』

通常盤(CD)税込2750円

【収録曲】
1.カルラテン
2.Daylight
3.Spring Field
4.ケイヒデオトセ feat. Benji Webbe from SKINDRED
5.World Of Ceiling
6.Refresh
7.猫と竜
8.ARIA
9.URAMICHI瓢箪いろは坂
10.Remember The River

参加アーティスト
伊地知潔 (ASIAN KUNG-FU GENERATION / PHONO TONES) (ds)
永田雄樹 (JABBERLOOP/POLYPLUS)(b)
伊藤隆郎 (TRI4TH)(ds)
橋本孝太 (g)
松下ぱなお (per)
Paul Lazar (vin)
やのっく (MAYSON’s PARTY (ds)
RYO (SECRET 7 LINE) (cho)
TAKESHI (SECRET 7 LINE) (cho)
Narita (SECRET 7 LINE) (cho)
hamaken (AIR SWELL) (cho)

Daylight Release Tour 2021 – 2022
<2021年>
9月29日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
9月30日(木) 京都 磔磔
10月2日(土) 岡山 YEBISU YA PRO
10月23日(土) 横浜 F.A.D.
10月24日(日) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
11月2日(火) 福岡 BEAT STATION
11月3日(水) 広島 Cave-Be
11月5日(金) 大阪 Music Club JANUS
11月13日(土) 宇都宮 HEAVEN’S ROCK VJ-2
12月14日(火) 東京 LIQUIDROOM
12月18日(土) 札幌 cube garden
<2022年>
1月15日(土) 静岡 アクトシティ浜松大ホール


ヘアメイク/青木拓也(DELA by afloat)
※掲載内容は2021年8月時点の情報です

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KELLY Editors

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