全国誌でも喫茶店が特集として取り上げられたり、若者の間でも、レトロブームが巻き起こっていたりしますよね。
僕としては、良い傾向として捉えています。飲食業は繁盛して、悪いことは一つもないと思っているので。“喫茶店”というキーワードに惹かれる人も増えていますよね。どこか古めかしい言葉だったけど、今はカフェよりも魅力的で、新しさすら感じます。この10年で、残念ながら閉店してしまったという、当然だけど悲しい事実もあって。個人経営の店や業態だと、高齢化問題が永遠のテーマであり問題ですよね。若い後継者が新しい客層を取り込んだり、自分のカラーを出そうと奮闘している様子を見ていると、無条件で「応援しなきゃ」という衝動に駆られます。具体的なお店で言うと、「ブラジルコーヒー」(金山)や「ロビン」(中村日赤)、「カフェタナカ 本店」(上飯田)なんかも代表例ですね。身内で継ぐのが一般的だけど、ご近所の生花店が店を守ったという新しいスタイルの観点からいくと、ここ「珈琲専門店 蘭」(丸の内)は、個人的にもストーリーが面白いなと感じています。
編集者として、取材をする上で気を付けていることは?
リサーチ・下見も兼ねて、まずは、お客さんとしてコーヒーを飲みに行くところからスタートします。目の前に相手がいることが大事だと思っているので、依頼は電話で済ませるのではなく、直接出向くのが大前提です。僕の場合、カメラマンも兼任しています。機動力の問題で、一人でやった方が単純にすぐ動けて、機動性が高まるので(笑)。取材の際は、ちゃんとした撮影機材を一式持って取材先へ出向きます。店の選定基準は難しいけど、僕の記事を見て、店に足を運んでくれた人が「来て良かったな」と思ってもらえるように、選ぶようにしています。僕は作品を作っている訳ではなくて、あくまで“本”という商品を作っているので、例えば1500円が値段だったら、1600円分の価値があるように意識して作っていますね。