キャスティングの経緯をお聞かせください
諏訪監督 主人公のハルがオーディション選考で一番にモトーラさんに決まって、その後、西島秀俊さんや三浦友和さん、渡辺真起子さんに出演を依頼しましたが、結果的に、同窓会のようなキャスティングになりました(笑)。彼らには、僕の映画の中にいてほしいという思いがありましたね。一緒に仕事するのは、20年ぶりでしたから。西田敏行さんの起用は、プロデューサーの泉さんのアイデアだったのですが、ベテランの役者さんだけあって、僕自身も刺激的でしたね。
モトーラさん 衣装合わせの時に、初めて他の役者の方とお会いした時は緊張しました。いざ現場に入ったら、「緊張したらやれなくなっちゃう」と思って、特に緊張はしなかったですね。三浦さんや西島さんとは撮影の時間も限られていたので、深くご本人と話すというよりかは、カメラが回っていない時でも、ハルと森尾というような、役のままで会っていたような感覚です。
諏訪監督 現場では、モトーラさんの貫録すら感じました。撮影が終わって、みんな口々にモトーラさんを絶賛していましたよ(笑)。
ドキュメンタリーのような印象を受けましたが、撮影の手法や音楽について教えてください
諏訪監督 順番に撮っていきました。広島県で始まって、岩手県にある「風の電話」でクランクアップするという形で。旅しているかのような感じですね。役者は順番に撮影が終わって、最後にハルだけが取り残されるような。カメラは1台で撮りました。音楽に関しては、世武裕子さんを起用しました。彼女とは昔からの付き合いで、いつか一緒に仕事したいなぁと以前から思っていました。日本では数少ない、映画音楽の専門的な教育をフランスで受けられていて、映画音楽のプロである彼女に、今回はこちらから注文は出さずに自由にやってもらいました。後から、できれば人の声を使ってほしいなと僕は思いましたが、お任せしますと最初に伝えていたので、特に何も言いませんでしたが、上がってきたデモはご自身の声がたまたま使われていて。あの声がなんとく、ハルに寄り添っているというか、印象に残るものに仕上がったと思っています。
西田敏行さんのお芝居は、全部お任せだったとお聞きしました
諏訪監督 衣装合わせと撮影前日、本番で西田さんとはお会いしました。西田さんは福島県のご出身で、福島県にはいろいろな感情を持たれていて、だからこそこの映画を引き受けてくださったと思うのですが、伝えたいことはいろいろ西田さんの中にもあったと思うので、それを自由に表現してもらえればと思って、完全に即興でした。しかも、スタートと言う前にもうすでに始まっていましたね(笑)。僕からお願いしたことは「何か歌ってください」ということだけでしたね。