私が「見る目ないなぁ」と似ているように感じたのが、「クレンジング」という曲です。アルバムのタイトルともつながっていて、実は『ノーメイク、ストーリー』の核になっている曲なのかなと。

「クレンジング」は、私の中で一番の推し曲ですね。これも自分を主人公にした曲で、「すっぴんをさらけ出したい!」という気持ちになった時に書いた曲で、かなりリアルさが出ているなあと思います。音も作詞とシンクロするようにアレンジしてくださって、めちゃくちゃお気に入りの一曲ですね。

6曲目の「outro」は、雨が優しく包み込んで、ゆっくりと時間が流れていくような、センチメンタルな一曲ですよね。

人生で初めて、他の人が作ったメロディに歌詞を付けたのが、「半透明のさよなら」という曲なんですが、「outro」は、その曲を作った方に作曲していただきました。

この方のメロディを聴くと、不思議と映像が浮かんでくるんです。私自身、頭の中に描いた映像をそのまま曲に落とし込むタイプなので、メロディを聴いて映像が流れるというのは自分の作り方とリンクしているので、歌詞を付けるのが楽しくて。ただ、私は歌詞を詰め込むタイプなので、この曲は音数自体がすごく少なくて、作詞に苦戦しましたね。いかに少ない言葉で頭の中の映像を表現するか、という挑戦ではありました。

別の方が作曲したもので言うと、「交点」もそうですね。曲の展開がドラマチックですが、杏沙子さんはこの曲をどう受け止めて、レコーディングに臨みましたか?

インディーズの時から幕須介人さんの作る曲が大好きで、今回も作詞・作曲をお願いしました。「こういう曲が欲しい」というリクエストを全くせずにいただいたのがこの曲で、最初に聴いたときは、あまりに大きなテーマで、つかみどころもないし、「どうしよう、私に歌えるんだろうか」と思いました。

レコーディングの時も、曲の内容をどう歌おうか迷いがあったんですが、幕須さんが「ちょっと前までは同じ時間や気持ちをすごく濃密に共有していた人が、今はどこで何をしているかわからないことってあるよね」とおっしゃっていて、「この曲のことだ」とハッとしました。人と人が出会う瞬間が、“交点”なんだと思ったんです。みんな同じ時間軸のグラフにいて、同じように時が進んでいく中で、誰かと出会って離れて、それでもう出会わなかったりする。そういうグラフで人の出会いと別れを描いている曲なんだなと、その一言で感じました。それで、人の出会いと別れの刹那みたいなものを、今の私が全部を理解して“正解”を歌うのは無理だと思って。なので、そんなに気負わず、今のままで歌おうと思って歌った曲です。

永遠に、ずっと、未完成だと思いますね。ライブで歌うごとに変わっていくと思うし、人生というグラフが進んでいくごとに、また自分の中での曲の感じ方も変わってくると思うし、誰かのことを強く思って歌う日が来るかもしれないし…。シンガーとしての人生に深みをくれる曲というか、自分のことを育ててもらえる曲かなと思っています。


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「あの曲あったよな」って
忘れられずに、温めていた曲も

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杏沙子、2ndフルアルバム『ノーメイク、ストーリー』リリースインタビュー!自分の素顔をさらけ出した、等身大の一枚を語る

WRITER

Wakana Yamauchi

Wakana Yamauchi

兵庫県出身。京都の大学を卒業後、 編集者になるために名古屋へ。ゲーム、猫、ファッション、写真が好き。自宅をリノベーションして以来、インテリアにハマっている。

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