先行発表曲の中だと、不穏さを感じさせる世界観の「高鳴り」が好きです。ワンカット撮影のミュージックビデオも、つい見入ってしまいました。アルバムに収録されている中で、特に思い入れのある曲はありますか?
望世さん 本当に全部が濃すぎて選びにくいんですけど、私が大本を作った「高鳴り」は、詞と曲の調和を目指して作った曲で。心情の変化を音でも表したくて、前半と後半は全く違う感じになっています。音作りのテーマが「不穏と破壊」だったんですけど、上手く表現できました。MV含め、すごく満足いく結果になった曲ではあります。真結さん 自分で作った曲は、作曲段階からずっとその曲のことを考えているので、触れている時間が長くて、思い入れは強いですね。特に今回のアルバムだと、「淵」が一番時間をかけて作った曲で。ロックっぽい音作りになっているんですけど、今までのペンギンラッシュではやってこなかったタイプの曲。わりとサウンドもギターがメインになった曲なので、挑戦したことがいっぱいあって、色々考えて作りました。
Narikenさん 僕は「喫水」ですね。レコーディングでは、始めにベースとドラムを録るんですけど、録る日の一週間前くらいにデモが来て(笑)。正直「大丈夫かな?」って不安だったんですけど、出来上がりがアルバムの中でも上位に来るくらい完成度が高くて。そういうギャップが好きですね。あんな短時間でいい感じになったっていう。
望世さん 最後の方、結構切羽詰まってて(笑)
真結さん そういう曲多かったよね。ギリギリまで出来てない、みたいな。
望世さん 「turntable」もずっとアレンジが定まってなくて…。でもギリギリで下りてくるんだよね。一週間前くらいに急にスコーンと「これだ!」っていうやつが出てくる(笑)
「turntable」は、バンドを始めたての頃に作った曲をリアレンジしたということですが、どのように変わったんでしょうか?
望世さん 最初はもっとキャッチーというか、すごく聴きやすいポップな曲でした。最初の頃のアレンジは、人気あったよね。Narikenさん 悪い言い方すると単純だけど、みんなに受け入れられやすい方向性でしたね。
真結さん 元の曲の明るさが今の私たちに合ってない気がしていて、今まであまりやってなかったんですけど、最近また色々とできることが増えてきたので、今の私たちっぽさを足してリアレンジしました。
「色彩」は、ドラマ「スナイパー時村正義の働き方改革」主題歌になった、初のタイアップ曲ですね。
望世さん 楽曲がすでにあって、お声掛けいただいたんですけど、楽曲の内容が偶然ドラマとリンクしていたので、ちょっとびっくりしましたね。ドラマは「働きすぎて病んだらダメだよ」みたいな内容なんですけど、この曲も「逃げ道がある」ということを歌っていたので。
「二〇二〇」は、このアルバムのリード的な曲になるのかなと。「想像力を絶やすな」という歌詞が突き刺さってきたのと、ベースリフが印象的でした。
Narikenさん ベースリフ、ゴリ押しの曲ですよね(笑)真結さん 基本は5拍子、時々6拍子みたいな曲で、元のデモもベースが持ってきたんですけど、ベースリフがほとんど占めていて。
望世さん 最初、ベースリフとドラムとピアノのコードしか入ってないんですよ。
真結さん 同じリフのまま、イントロからAメロ、間奏に展開して、セクションが何個もあるのに、ベースで展開を変えられないっていう…。結構アレンジに悩まされました。
「冴えない夜に」は、望世さんのハスキーなヴォーカルが引き立っていますよね。
望世さん 「冴えない夜に」は、アルバムの中で唯一、詞が先に出来ていた曲です。詞からメロディを考えたので、たしかに歌が立つ曲なのかもしれないですね。「月草」は、ピアノソロのメロディに惹きつけられました。
真結さん 「月草」は、私が作った曲でもあるんですけど、ピアノのメロディを主に周りを肉付けしていった曲ですね。このアルバムの中だとかなり明るいポジションです。一方で、暗くノイジーな「Woke」がアルバムのアクセントになっているなと。
望世さん ドラムも普通はパターンで叩いてもらうんですけど、この曲は一つずつ音をサンプリングしてレコーディングしました。Narikenさん レコーディング、15分くらいで終わりました(笑)
真結さん 最短だったね(笑)
望世さん 何個か種類録って、あとで組み合わせて。すごい変な音入ってるよね。
真結さん 私もピアノも弾かずに単音の素材を録ったんですけど、不協和音をわざと出しています。「出来るだけ気持ち悪い音を弾いて」って言われて(笑)
望世さんの紡ぐ歌詞は文学的な雰囲気ですが、インスピレーションはどういうところからきているんでしょうか?
望世さん 小説が好きでよく読んだり、あと、それこそ般若心経のお経呼んだりとか。昔の概念とか考え方とかも好きで、よく「言い回しが古臭い」って言われたりもするんですけど(笑)、それは多分そこからきているのかなと思っています。書くことは結構してきたので。近代小説が一番好きで、現代小説だと村上龍さんの作品が好きですね。
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名古屋出身のペンギンラッシュ。
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