牧さんは以前のインタビューで、「ぼくらは“雑食”なので、いろいろ聴くし色々やりたい」とおっしゃっていましたが、今回「鏡」でやりたかったことは何ですか?
牧さん 今までは歌詞も前向きなことを書くことが多かったんですけど、この状況で空元気な応援って、ちょっと違うなと思っていて。「大丈夫だよ」って言うためにも努力し続けなきゃいけないことを忘れずに、自分自身も奮い立たせられるようなリアルな言葉で、「ただ自分がその道を信じていけば大丈夫だ」って言えるように作ったので、わりとメッセージ性が強いですね。なので曲調はあえて聴かせる方向性ではなくて、アグレッシブでエモーショナルな部分をすごく意識した曲になります。
サビの音色が印象でしたが、音作りの部分でこだわった部分は何ですか?
牧さん このEPの前に「アメイジングレース」という曲を作ったんですけど、今までのギターリフを前面に押し出すっていうやり方から、シーケンスやシンセサイザーの音色を使った、弦楽器じゃないものとのユニゾンやハーモニーを意識するようになったので、音像感は今までともまた違ったバニラズの個性になっていっている気がしますね。
なぜ「鏡」というタイトルに?
牧さん 先ほど言った“表”と“裏”で、“裏”がすごく見えるようになったというか。世の中の人も、見えない部分にも敏感に反応できるようになってきていて。SNSでも自分をもっと大きく見せたり、かっこよく見せたり、可愛く見せたりできるけど、結果としてリアルな本人は変わらない訳で。虚構と現実の狭間がどんどん大きくなっている世の中なので、ちゃんと自分を鍛えてないとそこの反動に病んでしまったりとか、化けの皮が剝がれていくので、そういった部分をサビで「世界が化粧を落とした時」という言葉に詰め込んでいます。世の中の在り方が、よりリアリティを求めていく世界と、逆に虚構100%みたいな、二つの世界になっていくんだろうなって思っていて。バンドとしてはシビアになっていくので、そこを理解しながら「じゃあその世界でどう音楽を鳴らしていくか」を意識して作った曲ですね。
柳沢さんから見た、「鏡」の第一印象はどうでしたか?
柳沢さん 「世界が化粧を落とした時」っていう歌詞を見たときに、やっぱりすごいなと思って。この歌詞からギターリフが誕生したんですよ。歌詞から世界がひっくり返っていくさまを感じられたし、自分が生活していて感じることも結構あって、リズムでそれを表現するために、表と裏をごちゃまぜにしたフレーズにしようと思ったんです。入りは裏から入ってるんですけど、半分からは表だけになっていて、ひっくり返ったフレーズになっています。先ほど話に出たシンセサイザーの音は、前から挑戦していたことで、自分なりにいろいろ探していて、新しいエフェクターが今回のレコーディングで活躍しましたね。昔は自分のイメージにどうフィットするかだったんですけど、最近は考えて生み出すっていうこともやれるようになってきたかなって気がします。