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藤原歌劇団公演『ラ・ボエーム』ミミ役の伊藤晴さんにインタビュー

2020.12.14〈Mon〉

最終更新日:2020/12/11

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最終更新日:2020/12/11

日本のオペラ界を支えてきた藤原歌劇団は、4~5月の自粛期間を終えた後、いち早く感染症拡大防止策を徹底してオペラ上演をし、再開の波を牽引しました。そして、再開後、初となる愛知公演の演目は、藤原歌劇団が誕生するきっかけとなった『ラ・ボエーム』。ヒロインのミミを演じる伊藤晴さんに、意気込みや渦中の思いを聞きました。

共感して泣ける音楽に満ち溢れた作品です。

2014年に演じたムゼッタ役以来の『ラ・ボエーム』ですね。

藤原歌劇団へのデビュー公演だったということもあり、当時は「やっと掴んだチャンス!」と大変に気合が入っていました。そして、ムゼッタは自分が演じてきたオペラの中で一番好きな役になりました。今回ミミを演じるのは初めてなので、どのようなキャラクターになるか、とても楽しみです。『ラ・ボエーム』は、プッチーニの最高傑作だと思いますし、青春ど真ん中にいる方はもちろん、どの年代の方が観てもどこか懐かしく、胸が締め付けられるような切ない気持ちでご覧いただけると思います。

伊藤さんが演じられるミミはどんな女性でしょうか?


ミミとムゼッタは同志のような存在だと思っています。実は、私自身がパリに留学していた時、6区と18区で暮らしていたんですが、両方ともミミが暮らしていたような屋根裏部屋だったんです。パリの建物は本当に古くて、『ラ・ボエーム』の時代からずっと続いていると思いますし、ミミと同じように屋根裏部屋で生活をして、天窓から見える月と太陽があって…ということを経験しているのです。ですから、ミミのアリアにある“雪が溶けると最初の太陽は私のものなの”という歌詞は身を持って共感できます。当時の経験を生かしてミミを演じられると良いなと思っています。

自粛明けに初めて上演されたオペラ(藤原歌劇団『カルメン』)は、どのような思いで出演されたのでしょうか?

出演者同士の距離を取るなど、感染症拡大防止策によって変更になった演出でした。オーケストラの様子をモニターで観ながら歌う等、いつもと違う苦労がありました。ただ、もともと今回の『カルメン』のコンセプトが、抑圧された人たちがスペインの地で立ち上がる!というものだったので、演出の岩田達宗さんは「今だからこそやるべきだ!」と気合が入っていましたし、私もその情熱に士気を鼓舞されました。みんなが同じ方向を向いて立ち上がれたのは貴重な体験でしたし、結束が強くなったと思います。『ラ・ボエーム』の演出も『カルメン』と同じ岩田さんなので、様々な状況や制約の中でどのような演出をつけてくださるのか楽しみです。

4~5月の自粛期間中はどのように過ごされていましたか?

本番がなくなって残念ではあったのですが、じっくりオペラと向き合うことができました。毎日1本通してミミを歌ったりとか(笑)。普段はこの後あの本番が控えているとか、レパートリーが違うものもやらなきゃいけないとか、喉のことを考えてセーブするので、1本を通して歌うというのはなかなか難しいのですが、限界に挑戦するつもりで練習できたのは良かったと思います。あとは余談ですが、家族が飼っている金魚・タナゴ・メダカの世話にハマっていました(笑)。タナゴの卵を産むために必要な貝を置いてみたりとか。先日メダカが一匹になってしまって、可哀そうだと(『ラ・ボエーム』でロドルフォ役で共演する)笛田博昭さんに話をしたら、彼もメダカを飼っているそうで、少し分けてくれると言ってくれて。今度、ロドルフォからメダカをいただく予定です(笑)。

藤原歌劇団の方は仲が良いですね。

自粛期間中、オンラインお茶会などもしていました。歌手も指揮者も同世代の方が多いので、そんな方たちと今回のような青春物語を演じることができるのはとても嬉しいです。

世の中が大きく変わりつつありますが音楽や芸術に対して、今、どのような気持ちですか?

今、歌手として、声や身体の成熟の面で良い年齢になっていると思っているんです。自粛期間は、そういう歌手にとって貴重な時間を奪われてしまったので、本当に残念に思っていました。でも、お客さまからも自粛期間の反動か『ラ・ボエーム』の告知が本格的に始まる前から「絶対に行きます!」とのお声をいただき、皆さんが音楽や芸術に触れたいと思ってくださっていることが伝わってきました。コンスタントに舞台があるのが当たり前ではなく、一回一回を今まで以上に大切にしていきたい。寿命が短い歌手人生の時間を奪われた分、自分自身もっと輝きたいと願っていますし、お客さまにも、その輝いている歌手のひと時を感じていただけたら嬉しく思います。

新型コロナウイルスの逆境を跳ね除け、本格的なオペラ上演を遂行した藤原歌劇団の結束力。そして、藤原歌劇団が誕生するきっかけとなった演目で、ミミ役に初挑戦する伊藤晴さんにご注目ください。


伊藤 晴 (Ito Hare)
三重県出身。三重大学卒業。武蔵野音楽大学大学院修了。ミラノ、パリで研鑚を積み、パリ地方国立音楽院コンサーティスト・ディプロマ課程修了。声楽を馬場浩子、吉池道子、M.グリエルミ、近藤富佐子の諸氏に師事。フランス歌曲、オペラをP.ビロスに師事。バロックからベルカント、現代オペラまで幅広いレパートリーで意欲的に活動を拡げている。


2014年 藤原歌劇団創立80周年記念公演「ラ・ボエーム」(ムゼッタ:伊藤晴)©公益財団法人日本オペラ振興会

STORY
パリの屋根裏部屋で暮らす、夢だけは抱えきれないほど持つ若者たち。クリスマス・イヴの街に繰り出した仲間とは別に、一人残って詩作に耽るロドルフォの元をお針子のミミが訪ねてくる。一目で彼女に恋をするロドルフォ。また、カルチェ・ラタンのカフェで友人たちと合流したムゼッタは、パトロンに山のような買い物の荷物を持たせているが、本当はマルチェッロのことが忘れられない。19世紀初頭のパリで自由を謳歌し、芸術に生きたボヘミアンたちの運命とは……。

藤原歌劇団公演プッチーニ作曲 オペラ『ラ・ボエーム』

2021年2月6日(土)開催
<全4幕/字幕付き原語(イタリア語)上演>
場所 / 愛知県芸術劇場大ホール(愛知芸術文化センター2階)
時間 / 14:00~(13:15より作品解説あり。公演時間は約2時間45分)
料金 / S席12,000円、A席10,000円(【U25】5,000円)、B席8,000円(【U25】4,000円)、C席5,000円(【U25】2,500円)、D席3,000円
※【U25】は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※未就学のお子さまは入場できません。託児サービスあり(有料・要予約)。
チケットの購入・詳細はこちら
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000322.html

撮影 / 中垣聡(branch)

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