見どころしかないと思いますが、絶対にここは見てほしい! ところはありますか?
細かいところでいうと、例えば西村さんとのシーンで、お母さんの葬式のシーンなんですけど、手の位置をあえて西村さんと同じにしているんです。多分無意識だけど、家族だから合ってた方がいいかなと思って、動きをシンクロさせていたりとか、手の位置や数珠の位置もわざと合わせてみたりとか、そういう細かいところもこだわりました。その他にも橋爪さんと対立するシーンは、完全に受け身のお芝居になるので、どれだけ橋爪さんの言葉を受け入れられるか、気を付けていましたね。
橋爪さんの「誇りをもって仕事をしているのか」という言葉はグッときました。これは、終活には程遠い若い世代の方が見たときに、結構刺さる内容だと思いました。
僕みたいに常に夢を追いかけて、毎日違う仕事をしている人であれば、あんまり慣れることはないと思うんですけど、一般の会社に勤めている方や、なんとなく同じルーティーンで生活している人だと、仕事を始めた動機を忘れしまったりとか、何のためにこの仕事をしているのかなって“誇り”みたいなものを考える時間ってないと思うんですよね。だからあの橋爪さんのセリフは、僕らの同世代の人にとって、すごく考えさせられるセリフなのかなと思いますね。
“終活”と聞くと、年代が高めの人に向けてのイメージが強くありましたが、幅広い世代が見ても通ずるものがあるのかなと思いました。
作中にも幼い子からおじいちゃん、おばあちゃんまで、登場人物が幅広いので、それぞれの目線で見られる映画なのかなと思いますよね。
松下さん演じる、上司の桃井さんに「天国はありますか?」と尋ねているシーンがありますが、水野さんご自身はあると思いますか?
天国…。どうですかね。「人間死んだら終わり」という言葉があるので、どっちもあるなとは思うんですけど。ただ、これはよく現場で監督とも話していたんですけど、天国という存在があった方が残されていった人が楽というか、「今頃天国で、死んだおじいちゃん、おばあちゃんが楽しくお酒飲んでるんじゃない?」って思っていた方が楽じゃないですか。そういう部分で天国の存在は、必要なんじゃないかなと思います。
監督・香月さんとも、死に向かってどう生きていくかをお話されていらっしゃったのですか?
そうですね。人間生まれた瞬間から死に向かっていくので、カウントダウンが始まるじゃないですか。今、若い子でも事故や病気で亡くなる人もいますが、それが怖くて萎縮するんじゃなくて、「人生どうポジティブに謳歌していけるかっていうのを、届けられたらいいね」と、監督と常々話していました。そういう作品だと思うし、死に対する恐怖ではなくて、どうやって生きていくかというポジティブな部分を表現している作品だと思います。
確かに、見終わったときにホッとしました。これからも頑張ってみようという気持ちにもなります。
おじいちゃん、おばあちゃん世代が見ると、僕らより生きる時間が短いから、「もうちょっと時間を共有しないといけないな」と思ってくれると思います。今はコロナで人同士が会いづらいですけど、だからこそ、そんな風に考えられるきっかけになればいいなって思います。