今作では生まれ変わること、もう一度始めることもテーマとしてあるのかと思いました。例えば「Engineered Karma」の最後の「はじめからやり直してください」のナレーションであったり、「Monkey Mind Game」の「振り出しに戻って」という歌詞だったり、全てが変わってしまったこの世界で、もう一度原点に戻ってやり直すみたいなメッセージが含まれているのかなって聴きながらハッとしたんですよ。
上野さん やっぱり人間としても物質としても、成長していく段階で破壊と再生が繰り返されているとは思っていて。心の中で今まで当たり前だと思っていたことが死んでしまって、そこからまた新しい考えを身につけることで、全く新しい世界が見えたりする体験を一旦死ぬことだとすると、言葉通りに一旦死んで生まれ変わるという表現もありつつ、心の状態も含めてそういう表現になったんだと思います。
当たり前だったことが死ぬという意味では、今作を聴いて「孤独」という言葉の捉え方が大きく変わりました。寂しい言葉だと思っていたけど、今は何処か希望の言葉にも思えてきて。
松原さん そこに気付いて何かを変えようと思う人にとっては、「孤独」であることは必要な状態なんじゃないかと思っていて。単純に感情としてあまりにも他者との壁を作りすぎたり、人に対する感謝がなくなってしまうのは良くないことだと思うんですけど、結局はひとりひとり人間として自立しているという意味での「孤独」だと、お互いを思いやれる関係になれるための言葉になるんじゃないかなって。最近はそう捉えていますね。
そういうポジティブな捉え方だからこそ、生まれる音像が孤独をテーマにしつつもネガティブじゃないのかもしれないですね。SEの導入も含め、今作は楽曲的にも様々なチャレンジもされていて。
上野さん SEは前々から挑戦したかったんですよ。それが今回のミニアルバムのコンセプトと今の自分達に出来ることが重なったのでSEをたくさん入れてみたらすごくハマったんです。
手法としてのザ・ビートルズの「Revolver」感というか、そういう雰囲気も感じました。
松原さん そういったバンドとして面白い打ち出し方をするアーティストの音源を聴いて育っているので、音楽を聴くこと自体が体験だったり、経験に変わるような要素を詰め込みたいなって。まさに「Revolver」はそういう作品でしたしね。今作でいえばSE以外にも皓平のヴォーカルの音質にもそういう部分を感じてもらえると思いますし、経験としての音楽というものを意識して作れたと思います。
すごくピンポイントになってしまいますけど、「Engineered Karma」の後半で、展開が変わる瞬間のスネアの鳴り方ひとつ取っても音楽体験だなと。あのスネアが鳴った瞬間を初めて聴いた時に気づいたらガッツポーズしていて、それって体験だし経験だなって。
岩田さん 嬉しいです。あの部分の個人的なこだわりとしては、曲の展開の中で音の雰囲気をガッツリ変えたいけど、短い曲の中で軸を通したい気持ちもあったので、同じ演奏のプレイのままマイクの音量だけ変えたんですよ。細かい拘りなんですけど、気付いてもらえて嬉しいです。
後半のセッションのようなアウトロなんて興奮しっぱなしでした。まるで4人が目の前で演奏しているかのような怒涛のセッションを聴きながら、音楽が好きで仕方ないんだろうなって嬉しくなりました。
上野さん 「Monkey Mind Game」は、自分達的にも遊びに遊んだ曲なので、そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。今回、色んな楽曲を作るにあたって個人的に思っていたことがあるんですけど、僕らってこれまであまり大々的に批判されたことがなくて。もちろん知名度の問題もあるとは思うのですが、もっと賛否両論あってもいいなって思っているんですよ。
だから思い切って振り切ったと。
上野さん そうなんです。だから「Monkey Mind Game」はとにかく振り切りたかったし、やりたいことをやりたいように楽しんで作った曲なので、音楽好きの人からして音楽好きだと思っていただけたのであればそんな嬉しいことはないです。