監督の作品にはいつもクジラが出てきますが、なぜだろう?と思っていました。
『竜とそばかすの姫』にクジラが出てくる理由は、舞台が高知だからです。高知沖には、クジラが見えるんですよね。あと、「酔鯨」という高知のお酒もありますよね。僕はクジラとかオオカミが好きでよく作品に出しているんですが、“人間によって勝手にイメージを押し付けられた動物”が好きなんです。例えば、オオカミは、中世ヨーロッパのキリスト教では悪者にされていたり、クジラは、ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』では、人間が自然を克服して打ち勝つべき象徴として描かれていて、かと思えば、現代では平和の象徴とされていたり…。そういった人間の勝手なイメージづけがありますけど、動物は動物じゃないですか。どっちかというと、動物側に思い入れが強いんですよね。
今回もクジラについては説明がないんですけど、みんな「クジラが良かった」って言ってくれます。『ファイナルファンタジーXII』でアートディレクターを務めた上国料勇さんがデザインを手掛けていて、現実とも虚構ともつかないようなビジュアルになっています。都合のいいクジラじゃなくて、もっと違う意味があるようにできたらいいなと。