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「メ~テレ60周年メ~テレシネマ映画祭2022」が開催!映画『ホテルローヤル』『淵に立つ』などメ~テレ製作映画が再上映。
#映画

2022.5.26thu

「メ~テレ60周年メ~テレシネマ映画祭2022」が開催!映画『ホテルローヤル』『淵に立つ』などメ~テレ製作映画が再上映。

2022年4月に開局60周年を迎えるメ~テレ。節目の年を記念し、メ~テレ製作の映画の一部を1週間再上映する「メ~テレ60周年メ~テレシネマ映画祭2022」が開催中です。

5月21日(土)に映画『ホテルローヤル』の武正晴監督、『本気のしるし(TVドラマ再編集劇場版)』の深田晃司監督、5月22日(日)には、昨日に続き『淵に立つ』の深田晃司監督、『あん』原作者のドリアン助川さんが舞台挨拶に登壇しました。5月21日(土)に編集部が潜入してきましたので、その様子をお届けします!

2018年に撮影する予定が・・・実は苦労した『ホテルローヤル』武正晴監督

STORY

北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテル「ホテルローヤル」。美大受験に失敗した雅代(波瑠)は、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルを手伝うことに。アダルトグッズ会社の営業・宮川(松山)へ密かに想いを寄せつつも黙々と仕事をこなす雅代。ホテルには、非日常を求めて様々な人が訪れる。そんなある日、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的に。さらに父の大吉(安田)が病に倒れ、雅代はホテルと自分の人生に初めて向き合っていく―。

MC神取さん  『ホテルローヤル』の武正晴監督です。宜しくお願いします。それではまず、ご挨拶お願いいたします。

武監督  この映画の監督をさせてもらいました、武正晴です。朝早く9時から来ていただきまして長い一日になりそうですが(笑)、他にもまだ映画館でいい映画がいっぱいやっていますので、もしお時間あれば他の映画も観て帰られたらいかがでしょうか。今日はどうもありがとうございます。

MC神取さん  宜しくお願いいたします。『ホテルローヤル』はもう監督にとっては、だいぶ前ということにはなっちゃいますけれど、また上映されるっていうのはどういうお気持ちですか?

武監督  コロナ前の2019年ですよ。あぁ、うれしいですね。ちょっと苦労したと言いますか、作るまでかなりいろいろ大変で、それこそメ~テレさんのおかげで、できたものですね。

MC神取さん  それをさっき私も初めて伺いました。

武監督  そうですね。2018年に撮影する予定だったんですけど、とある大手会社が、あの…「やっぱ、やーめた」って(笑)。

MC神取さん  いま言っちゃっていいんですか!?(笑)

武監督  突然、「いや、うちの会社あの、来年からアニメ主体になるんで」って聞かされて、目の前が真っ白になりました。えっ、そういうことってあるんですか?って。

MC神取さん  それは、どの段階まで決まってて?

武監督  もうだいぶ台本準備稿もできてキャスティングもされていて、まぁ、ほとんどこのメンバーですけどね。主演の波留さんもみんなもう決まって台本に名前も入れて「さあ、準備稿刷ろうか」って、次の日かな。それこそ朝9時ですよ。こんな早い時間に呼び出されるって、だいたい良く無いパターンで。いつもの大きい会議室じゃなくて、小さい窓も無いような会議室で、紙コップでアイスコーヒーが置いてあるのは良く無いんですよ(笑)。いや~、ビックリしました。プロデューサーの方の企画だったんですが、そのプロデューサーたちの熱意みたいなものをどうしても諦めきれないのと、せっかく桜木先生のいい原作をいただいたので。原作の小説を読まれてない方はぜひ読んでいただきたいです。僕はあんまり本や小説など読まないんですけど、読んだ時にすごく共感できました。ただ、オムニバスなので、ホテルをめぐってオムニバスを1話1話、どう物語をこしらえようかと。かえってそれを桜木先生が、「自由にやってください」って言ってくださったんで、もう好き勝手にやらせてもらいました。本当はもっと予算があれば、もうホテルから出ないような話でセットを組んで、そこに出入りする人の話を作りたかったんですけど、ちょっといろいろ事情が変わって、そういうのもできないなぁって。

要するに僕の中では、非常に実験的な映画ができるなって。1セットを組んで、ホテルを主役にそこに入ってくる人々を、どう出入りさせようかっていう。それで、今度はその1年後にメ~テレさんが拾ってくれました(笑)。そうなった時に考え方をちょっとあらためて、原作者の桜木先生の本に書かれている、全部事実ではないんですけど、桜木先生自身が元々ラブホテルの実家で過ごした、要するにここ波留さんがやられた主人公「雅代」が、先生本人がモデルになっているんじゃないかってことにだんだん興味が出てきて。桜木さんの書くものをずっと読んでいく中で、彼女は北海道に在住してずっと北海道、特に釧路にこだわった作品を書き続けているってところに、なんか共通項あるんじゃないかと思いました。『ホテルローヤル』が出てくる別の作品もありますから。『ホテルローヤル』だっていうご実家で、いまはもう無いんですけど、そこにあった場所で撮影したらどうなるだろうってなって。

MC神取さん  でも、予算がなかったんですよね?

武監督  ないですね。もう大反対されていました(笑)。『ホテルローヤル』はなくなってしまったけれど、その近所には、こういうホテル街、ホテルがいくつかあった、そこをまず交渉するというところから始まりました。なかなか撮影において、ラブホテルといわれているような場所で撮影するっていうのは、なかなか交渉事としては、難しい。そこをホテルのオーナーの方々が協力してくれて、お客さんのプライバシーもあるんで、そういうのも含めて、すごく気を遣ってやってく中で、札幌に1セット、セットを組んで、全部、北海道で撮るっていうことで、なんかこうプロデューサーに頭下げながら騙しながらみたいな(笑)、説得しながら撮ったっていうそういう作品ではありましたね。北海道で撮ったっていうのが、すごい力になったというか、釧路っていう石川啄木がかつて最果てと呼んだ場所ですよね。盛岡出身の彼が最果ての場所って呼ぶくらい厳しい冬の寒さと、夏のすばらしさみたいなものが、両極端共存している場所ですよね。だから、住んでいる人たちにとっては、味方にもなるけど、敵になりえるような非常に厳しい所。そこでの主人公の在り方っていう。ちょっと東京では作りえないドラマ作りというか、そういうものをやれたというか。メ~テレさん60周年、ここで呼んでもらえたのもまた、メ~テレさんのおかげで、だいぶ感謝しています。いや、本当に拾ってもらったんです。一回ダメになったってなかなかこれ・・・。

MC神取さん  武監督のキャリアのなかではあんまりないですか?

武監督  いや、ないですよ。ダメになった作品はいっぱいありますけど、復活したことは一度もないですからね。昨年もコロナで3本飛んで、どうなのかな・・・。だから、映画っていうのはシナリオを含めてですけど、意外といいシナリオもいい作品もいっぱいあるんですけど、作品が飛んでしまうことも多いです。成立することの方が難しい。

主人公をなんとか映画の中で上手く旅立たせてあげたい、それはやっぱり釧路で

MC神取さん  そうですね。前インタビューさせてもらった時、伺ったんですけど、桜木さんが釧路で育ったっていうことがこの作品に流れるこの絶妙な雰囲気というか、釧路で育たなきゃこういう小説書けないような・・・

武監督  小説家にとっても、何か作品を作るとか、音楽家とかもそうでしょうし、我々もそうなんですけど、やっぱり基本的に人の持っている原風景って非常に大きいと思うんですよね。原風景っていうものをいつまでこうちゃんと大事にして、子どもの時に培ったエネルギーみたいなものって、大人になればなるほど失っていくことが多く、ほとんど失うんですけど。その原風景をどこまでこう、こだわって、しつこく思っているかってことが作品に繋がっていくっていうのは、作家さんたちと会うといろいろそういう話をしています。俳優もそうなんですけど、そういう原風景を強く持っている方の方がそういうものを作品として出している方が多いです。

MC神取さん  武監督の原風景、どうゆうものですか?

武監督  僕なんかも小さい時、いろんな土地を転々としていたってこともあるんですけど、僕らの場合は、団地とかそういう場所とかが原風景ですけど。それぞれの土地での思い出、記憶と言いますか、記憶の再構築するのが、自分の生きてきたものをね、どうやって映画の中で再構築していくかのか考えて作品を作っています。

僕はこの小説で映画も含め、この『ホテルローヤル』っていう主人公が取った生き様とか、選択っていうのは、すべての人が共感できるわけでは無いかと思いますが、僕はこの小説を読んだ時に、主人公の彼女の取った選択もすごく共感ができました。その時に積極的な逃避っていうのも自分もしてきたんで、自分の育った場所は味方でもあるけれど、敵に変わることもあって、やっぱり最終的に誰も自分のことを知らずに自分の知らないところで何か自由に何かしてみようという決心というか決意と言いますか、それはなかなか勇気のあることだなぁと思います。この主人公をなんとか映画の中で、上手く旅立たせてあげたいなって思って。やっぱりちゃんと釧路でそれをさせてあげたいなって気持ちはありました。

MC神取さん  いま、質問がちょうど釧路で(笑)。

武監督  釧路から来たの!?

MC神取さん  いや、釧路のことについて。釧路では何かおいしいものを食べましたか?と。どなたが質問されたのかな(笑)。そういうのはやっぱり聞きたいですよね。

武監督  伊藤沙莉さんが撮影に来てすぐ東京に戻らなきゃいけなくなったんですけど、せっかく来てくれたんで、おいしいもの食べに行きたいなぁっと思って、時間があった夜のある時に、やっぱりジンギスカンを。近くにあったジンギスカンがおいしくてね、沙莉さんとスタッフと一緒に食べましたね。

『ホテルローヤル』の小説を読んで高校生を沙莉さんでイメージしていたのに、撮影が延びて最後のセーラー服姿だなって(笑)

MC神取さん  その、伊藤沙莉さんついても質問が来ました。全裸監督でも一緒にやられていましたね。

武監督  本当はね、『ホテルローヤル』の方が先だったんですよ。

MC神取さん  おっ!そうなんですね!

武監督  企画が2014年くらいで『ホテルローヤル』の小説を読んで高校生を沙莉さんでイメージしてたんで、ずっと「君にピッタリの役あるから」って言ってるうちに、だんだん、彼女が年を取っていく(笑)。ギリギリだなって。また一年先になっちゃって、大丈夫かなって言っていました。「最後のセーラー服姿だな」なんて言いながら、全裸の方が先になっちゃって。公開は『ホテルローヤル』がその後になったかな。

MC神取さん  伊藤沙莉さんの印象はどうですか?やはりそれだけ長く伊藤沙莉さんを監督が採用するっていうのは、魅力を感じているってことですよね?

武監督  最初に会ったのは、中学2年生ぐらいのころで、オーディションの時に会ってね、「変な女の子いるな~」って。まぁ決してすごい絶世の美女じゃないんだけど、中学2年生くらいの時から、本当にお芝居が大好きで、特徴があって、この人はきっと日本のこれからの映画で主役というよりもサブキャラで、すごい活躍する人になるんだろうなと思っていたら、それどころか、いまはね、主役としてもすごく活躍してるし、僕、今度、沙莉さんと「彼女、主役で映画作りたいよね」って、最近よく会う度に話していて、そういう機会が作れるように頑張りたいなと思っているんですけどね。

MC神取さん  武監督からすると「俺が育てた~」感じがあるんですか?

武監督  そんなことはないですよ!あの、そんなん全然。すでにもう出来上がっているから。逆にこっちがご一緒したいっていう。すごいファン心理ですよね。

MC神取さん  あと、キャストについてももう一つ。安田顕さんについて。

武監督  安田さんはね、もう結構早い段階からね、桜木さん指名だったみたいでね。お父さん役やっているから。小説の中とか映画の中では、お父さんはちょっと病気になって亡くなっている作品になりますが、実際はまだ桜木さんのお父さまはご健在だそうなんですね。映画と小説の中で殺すなんて、なんて残酷な。安田さんは北海道出身の方なんで、言葉使いも含めて非常に想いを入れてやってくれる。撮影をやっている時に、ちょうどTEAM NACSが、わぁ~と来ている撮影現場と俺が一緒になったことがあって。そしたら、みんな「うちの安田、よろしくお願いします!」って言っていました(笑)。

MC神取さん  実年齢よりもかなり年上の役を『ホテルローヤル』では演じました?

武監督  そうですね。年代劇だから、実年齢と変わっていくと言いますか、特殊メイクを使いながら細かくやれたらなと思いました。余さんもそうなんだけど、ちょっとずつ年齢が経っていくっていう感じをどうやってやろうかっていうのを、特殊メイクの人と一緒に相談しながら撮っていきました。

偶然なんだけど、それこそ『ホテルローヤル』の舞台挨拶以来、松山ケンイチさんと昨日偶然会いました。昨日いろいろ映画の初日だったみたいで、会ったらススーっと寄ってきてね「武さん、ホテルローヤルの話していいっすか?」って。「2年ぶりだね~」なんて言っていて。なんかその時の現場の「あん時、俺、やっぱりあの~、北海道で撮影して、うれしくて」って。あの人、本当に素敵な人で、東北が近いってだけでテンションが上がるらしいんですよね。

MC神取さん  青森の方ですよね。

武監督  自分の故郷が海ひとつ挟んで向こうにいるっていうだけで、なんかテンションが上がるって言って。「あん時、北海道がうれしくて、スミマセン!訛りが出過ぎちゃいました!」って(笑)。「いや全然大丈夫だよ!青森の人がこっちで働いているっていう風に見えたりするんじゃないの?」って。「いや~、北海道弁より自分の地元の言葉が出過ぎっちゃって」と言っていました。北海道にね、たまたま彼が移住したばっかりの時に、すごいタイミングが合ったんですよ。奥さんの小雪さんと話していたら「うち、北海道、函館に移住したんですよ」って言っている頃にこの撮影があったっていう。ちょうど移住し始めたころに!いま彼は函館から東京へ出る生活をしていますけどね。

松山さんは、天真爛漫!数分一緒にいただけでも幸せになるような気持ちにする、すごい爽やかな俳優さん

MC神取さん  松山さんのキャスティングは、監督ご指名で?

武監督  そうですね、2010年に助監督の時にご一緒して。もちろん元々すごく好きな俳優だったっていうのもあるだけど、松山さんを結構早くから「松山さんどう?」って、プロデューサーとその2010年にやったのが一緒だったから、みんなで共有していたっていうのもあるんですよね。

MC神取さん  松山さんの朴訥とした感じが“えっち屋さん”の感じとね。

武監督  本当に松山さんてね、もちろん演技力もすばらしいですよ。最後のラストの二人のところっていうのは1シーン、1カットで、延々長回しで、あの二人じゃないとなかなかああいう長回しはできない。僕、あんまりリハーサルとかテストとかやんないんで、ほとんど一発本番でいくんですけど。テスト一回くらいやったかな?ちょっと途中までね。だけど延々の長回しに耐えられる松山さんがいれば大丈夫。波留さんももちろんそうなんですけど、松山さんを含め見ながら延々としゃべっていく。この人は本当に普段から本当にいてくれるだけでこっちの気持ちが爽やかになるぐらい、悪い言い方するとみんな「松山さん天然だ」って言うんだけど、その天真爛漫というか、一緒に数分だけいても幸せになるような気持ちにする、すごい爽やかな俳優さん。これはもう10数年前にデビューしたころから全然変わんなくて、昨日は本当にそれを実感しましたね。「ずっと武さんと話したかったんですよ」なんて言いながら、昨日もちょっと立ち話したんですけど、そしたら、「俺、偶然だけど何かあるね。明日、俺、名古屋で『ホテルローヤル』」。「ホントですか?!」って。「じゃあ、なおさら『ホテルローヤル』の話したい!」って話し始めてね。

MC神取さん  なんかすごいタイミングですね!

武監督  今日この後、東京帰ったら『ホテルローヤル』の音楽作った富貴さんとの打ち合わせも待っているんですけどね。

MC神取さん  へぇ~!それは別の作品のですもんね?

武監督  それはタイミングだから。なんかすごく今日は縁を感じますね。

波留さんは、原作も含めて作品の理解をすごくされている方

MC神取さん  主演の波留さんについても、お伺いたいなっと思うんですけど。波留さんは元々、小説を先に読んでらっしゃって。「この役をやれるなんて、うれしい」っていう感じで参加されたっていうことで。

武監督  彼女はやっぱり原作から含めての、その作品の理解をすごくされている方だったので、僕なんかよりも主人公のことをよく理解してるぐらい。この辺にいるくらいの感じでやってくれるんで。撮影中はもうほとんど波留さんっていうよりも、ずっと主人公の状況で北海道にいらっしゃった感じのイメージはありますね。もう、あんまり他のキャストの撮影中は、喋んなかったし、ポツンと孤立している感じの中でお芝居やっているところがあってね。すごく集中されてやっていました。

MC神取さん  波留さんは、超忙しい時に北海道行ったり来たりってことですよね?

武監督  それまでドラマをやっていたりしたのかな?そういう感じを一切見せずに淡々とやっていましたよね。こっちはすごく安心できたというか、任せられたというか。すごく主人公のことを理解しているなぁっというそういう感じはありましたね。

MC神取さん  ロケ班はどれくらいかかりましたか?ラブホテルはセットですか?それとも本物ですか?

武監督  外観は全部、先ほども言ったみたいに本当のホテルローヤルがあった場所。原作にも出てくるんですよね。読んでいると、踏み切り渡って坂上ってって書いてあって、それで見たら「あぁ、ここに踏み切りあるな」って思ったんで、この辺なのかなっと、聞いたらやっぱり近くにありました。外観は釧路ですね。中は札幌。さっき言ったみたいに北海道のテレビ局の中に廊下と部屋ですよね。あそこだけをセットを組ませてもらいました。

MC神取さん  北海道のテレビ局ですよね?

武監督  そう、北海道のテレビ局。札幌まで行って。釧路と札幌って意外と遠いですよね。同じ北海道でも遠いなと(笑)。

MC神取さん  監督の中ではすぐに行ける感じでした?(笑)。

武監督  いやいや!僕は北海道で撮影していますけど、釧路の遠さはやっぱり実感できたって言いますか、陸路で釧路から札幌まで渡ったのは初めてだったので、やっぱり北海道で全部やれたっていう感じかな。ロケ班はね意外と旭川行ったりとか苫小牧行ったりとか、一応他の所も見ましたけど、やっぱり釧路でやろうということで、ロケ班はスムーズに進みました。そんなに難しくなかった。

自分の中でやってみたいなぁって思うチャレンジができた作品の一つ

MC神取さん  私もあらためて『ホテルローヤル』を今回観させてもらったんですけど。オムニバスだったこの小説が、こういう風に雅代を主人公にして、最後に結実する感じがすごく武監督の手腕だなぁという風に思わせていただきました。映画何回か観られてる方いらっしゃいますか?今日が初めてっていう方?2回目っていう方?おぉ、いらっしゃいますよね!2回目、3回目でも結果を知ったうえで観るのもすごくいい映画なんじゃないかな~っと思いました。

武監督  そうですかね?まぁ、そうかもしれないですね。1回目だとちょっと分かりづらい、分かんないところがあるかもしれないですけど。

僕、本当に小説を読まないんで、ぼんやり読んだらこれやられちゃうなっていう小説なんですよね。見抜けないって言いますか、かなり読み込みましたよね。この一行こっちの話に繋がるんだって、見つけるまでが大変で。で、なんとなくそういう小説なのかな?って思っているうちに、これ一個一個のオムニバスを描いていくよりは、小説の裏側にあった共通項みたいなものを全部同時期に並べてみたらどうなるんだろうってことに興味を持ち始めました。桜木さんの企んでいると言いますか、直木賞取った、順番も含めて非常にやっぱり作品への構築力というか、構成力はこの人はただ者じゃないなっていう感じがありまして。そこの興味がやっぱりこういう映画を作ったんじゃないかな。なかなか普通だとできないんですけど。

昔から一つの部屋を主人公にして、20年30年、家とかもしくはアパートの一室とかを使って、人間なんかが出入りしてく物語を作れないのかなぁっと思っていたことがあったんですけど、ちょっと今回は、それに近いのをやってみたいことの一つの中で、たまたま「『ホテルローヤル』っというのどうしますか?」「そういう風にやってもいいですか?」って、やらせてもらった。上手くいったかどうかは、ちょっと分からないんですけども、自分の中でやってみたいなぁって思うチャレンジっていうのはできた作品の一つかなって。

なかなかお金の無い作品になってくると、セットを組むのができないんです。本来は自分も助監督の時にセットでいろいろな映画の楽しさっていうのを学んだんだけど、それをこう発揮できる作品というか、場がなかなかなくて。スタッフたちにとっても、それはなんか非常に気の毒だ。人様んち借りて撮影して、早く帰ってくださいって言われるより、こういうやっぱりセットを組んでじっくりと照明使うとか、カメラワークをして撮るっていうのが、いま日本の映画はなかなか減ってきてしまって、そういう意味でもやっぱりやってみたいと思いました。

MC神取さん  そういうところも今一度、今日ご覧になりましたけど、もう一回違う視点で観ていただくのもいいかなぁっと思っております。

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【11/13公開!】波瑠さん×松山ケンイチさん共演の映画『ホテルローヤル』の武正晴監督にインタビュー! 11月13日(金)公開の映画『ホテルローヤル』。直木賞を受賞したベストセラー小説を映画化したことでも話題になっている本作が、いよいよ来月公開。愛知県出身でもある武監督に、映画のロケ地は釧路?キャストは?撮影でこだわったポイントは?などなど、映画の見どころをインタビューしてきました。 STORY 北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテル「ホテルローヤル」。美大受験に失敗した雅代(波瑠)は、居心地の悪さを感じながら、家業であるホテルを手伝うことに。アダルトグッズ会社の営業・宮川(松山)へ密かに想いを寄せつつも黙々と仕事をこなす雅代。ホテルには、非日常を求めて様々な人が訪れる。そんなある日、一室で心中事件が起こり、ホテルはマスコミの標的に。さらに父の大吉(安田)が病に倒れ、雅代はホテルと自分の人生に初めて向き合っていく―。 原作者の桜木紫乃さんのこだわりを映画にしたい、映画のロケ地は釧路に 原作もある本作ですが、美術やロケ地含め、監督のこだわったポイントを教えてください。 武監督  原作ものの難しさというものは、他人の褌で相撲を取らないといけないので、原作を好きな人をがっかりさせたくないという思いがありました。ファンの人からしたら、僕らは後から入り込んできた人間なので、映画化ってそこの難しさがありますよね。すごく素敵な原作ですが、映画を作るには原作をいじらなくてはいけないので、どれだけ原作の良い部分を活かして、やれるかということですね。今回の場合だと、ロケ地は釧路だという話になりまして、自分がこだわるというよりかは、原作者の桜木紫乃さんのこだわりを映画にしたいなと思いました。 桜木さんは、北海道に在住して北海道のことを書き続けている作家さんなので、北海道をよくわかっていない我々が、無知のままやれない題材だなと思って、桜木先生の本を全部読んで、先生が北海道の釧路にこだわっている面白さをできるだけこちらでも共有させてもらいました。 そして、映画の主人公になり得る、それぞれの物語を繋げる203号室の部屋をセットで作らなくてはいけないなと思いました。また、ラブホテルという閉鎖された空間で、あえてオールシーズンを見せる表現や、朝昼夜をホテル内で演出するということに挑戦しました。これは映画としても一つのチャレンジでしたね。そこは面白くできました。 ラストの波瑠さんの表情が全て キャスティングについてと、波瑠さんと松山さんで良かったなと思う場面を教えてください。 武監督  松山さん演じる宮川に惹かれて、波瑠さん演じる雅代が、「体を使って遊びませんか」と宮川を誘う場面は、本作の山場だと思います。ここは二人の芝居が肝だったんですけど、やはりさすがだなと思いました。原作の中でも、このシーンが一番、桜木さんの筆が立っているところで、「いま奥さんのこと考えたでしょ」って言う部分は、男としてはドキッとするような、男性に対しての女性の視線みたいなのがすごく良く書けていて、波瑠さんが前半で抑えていた控えめな芝居がああいうところでビシッと出るのが良いです。 最後に、みかんを見た時の表情とか、原作の小説を読んだ時の読者の感覚を汲んで、雅代自身がリアクションするというような、あのラストの波瑠さんの表情が全てだと思います。波瑠さんは、原作を仕事のオファーよりも先にプライベートで読んでいたそうで、そこから始まっているのも良かったかなと思います。指示を出さなくても波瑠さん自身がもうわかっているように感じましたし、雅代という人をよく理解をされているなと撮影している時にすごく感じました。 実は一番力を入れたのが雅代の部屋 原作では描かれていなかった、映画ならではのこだわりのシーンを教えてください。 武監督  原作には描かれていなかったのですが、雅代の部屋については、かなりこだわってスタッフと議論しました。最後に書き足した部分になりますが、そこがすごく重要になってきましたね。最初は台本になく、一行だけ「雅代は部屋にいる」と書いてありましたが、じゃあ部屋はどうするのかという話になり、ラブホテルを作った親父がいい場所を用意したんじゃないの?とか、いい風景が見える部屋なんじゃないの?って、意見を出し合って「この風景最高だろ?」というセリフも増やしました。また、この部屋で育つ女の子は一体どういう人なのだろう?とか、じゃあ絵を描いている設定にしようとか、美大受験に失敗したっていう一行も原作にあったので、それをヒントに部屋で絵を描いているということにしました。そしたら、じゃあ、ここでどんな絵を描いているの?と、次は美術部の悩みの種に。 雅代の部屋は、台本や原作にもなかったので、内装にも悩んでいたら、札幌のロケで控室に使っていた立派な建物を覗いた時に、廊下にでっかい窓があって、これを屋根裏部屋にできないのかなと思いました。ただの廊下にセットを組み、窓からは、湿原が見えるようにしちゃおうかって話して、合成で湿原をはめ込んで、ここからオールシーズンの風景を見えるように工夫しました。実は一番力を入れたのが雅代の部屋ですね。原風景というのは、みんな覚えているもので、雅代も最後に思い出すのは、親父が作ってくれたあの部屋での思い出になるのかもと、すごく物語が広がりましたね。映画にとってはすごく大きな意味を持たせることができ、スタッフが一番苦労した部分だったのではと思います。僕らの新たな発見でしたね。 合成などはよく映画に織り交ぜる手法なのでしょうか? 武監督  今までもありますが、今回は湿原をはめて、さらにオールシーズンきっちり見せたかったのでCGも入れました。これは新しいチャレンジでしたね。スタッフの中に北海道出身の人も何人かあえて入れた時に、そこの指摘はありました。我々にはわからない、北海道での生活の厳しさや、夏が終わったらあっという間に冬がやってくる感覚など、北海道のスタッフの人たちの話を聞きながら、雪が降ってくるタイミングだったり、木枯らしの音だとか、録音の人も北海道出身の人にお願いしたり、北海道出身の人を技師として入れたのが、通常とは違う感じになりましたね。 歌詞も映画にぴったり!急に降ってきた『白いページの中に』 主題歌の決め手についても教えてください。 武監督  主題歌に関しては、ロケハンで釧路の坂道を見ている時にあっ!と思って、ホテル戻ったらすぐにYouTubeで『白いページの中に』を聴いてみました。自分の原風景と言いますか、小学生の時に聴いていた曲が、急にこの作品に合うのではと思って、久しぶりに聴いたら、ぴったりとはまったので、よし、これでいこうと思いました。普段聴いているわけではないですが、なんか急にふっと来ましたね。歌詞もぴったりでした。 音楽の担当が富貴さんとのことで、本作での音楽へのこだわりも教えてください。 武監督  今回はタンゴでいこうかと提案しました。女性が部屋を出ていくようなイメージがなんかタンゴのような感じがして、編集中はあらゆるタンゴの原曲を貼り付けてみたりしていました。音楽もすばらしい映画になっています。 エンドロールの演出についても教えてください。 武監督  映画はオープニングもタイトルもエンディングも演出なんだなと、子どもの時の経験で知っていて、最後の最後まで名残惜しいなと思う演出ができないかなと思っています。『ホテルローヤル』に関しては、カーテンコールの中で映画が終わっていけばいいなと思いました。後でエンディングでのカットを選ぶこともありますが、今回に関しては最初から台本に書き込んでいました。 『ホテルローヤル』 11月13日(金)よりセンチュリーシネマほかにて公開 監督 / 武 正晴 原作 / 桜木紫乃「ホテルローヤル」(集英社文庫刊) 出演 / 波瑠、松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、原扶貴子、伊藤沙莉、岡山天音、夏川結衣 ほか PG12 公式サイト / https://www.phantom-film.com/hotelroyal/ ©桜木紫乃/集英社 ©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会

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ドラマでは泣く泣くカットしていたシーンも合わせて再編成した
『本気のしるし(TVドラマ再編集劇場版)』の深田晃司監督

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Mai Shimomura

Mai Shimomura

岐阜県出身。スタジオやブライダルでの 撮影経験を6年経て、編集者へ転身。 カメラと映画が好きなミーハー女子。 素敵な出会いを写真に記録しながら、 みんなの心に届くモノを発信したい。

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