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自分以外の役者が自分以上に輝いていないといけない

――今回、主人公の青年たちの恋愛の話ですが、女性2人の描き方もすごく印象的でした。物語としては脇役になってしまいますが、そこの描き方はどのように考えられましたか?

須藤蓮さん  『ワンダーウォール』という作品は5人のメインキャストで、優劣がないんですよ。そっからですかね。僕は役者で、脇役とかで出るわけじゃないですか。主演で出たこともありますが、普通に考えたら作品を動かしている人間に優劣はなくて、監督もキャストも画に映っている限り…という理想論があって、それをなるべく体現するようにしました。あと、青年たちの恋愛をわかりやすくまとめていて、ポスターにも女性2人は写っていないですけど、みーこと文江がこの映画にとって劣にあたるかと言ったら、決してそんなことはなくて、対等もしくはそれよりも輝いていて良いと思って、それはすごく意識しました。自分が監督・主演で描く分、自分以外の役者が自分以上に輝いていないといけないと思っていました。じゃないと、自分のエゴや自分を良く見せるために撮っている映画になってしまうので、それは嫌だなと思って。もちろん自分も頑張りますけど、自分以上にそこにちゃんと輝きがあってほしいと思いました。

“尾道・渡辺あや脚本・コロナ禍映画”だけでめちゃめちゃ激しく上がった気持ちに忠実に

――舞台として、尾道を選ばれた理由はどうしてでしょうか?

須藤蓮さん  これも縁なんですが、ちょうど『ワンダーウォール』という作品の映画版の封切りが尾道で、コロナ直前の尾道映画祭で初めて僕は尾道へ行って、もちろんその時は映画を撮ろうと思って行ったわけではないですけど、そこに滞在している時にすごく居心地が良くて、シンプルにいいなって、帰りたくないなと思っていた時期がありました。その時は1泊の予定だったんですが、4、5泊くらいして帰ったんです。それを渡辺さんが見ていて、尾道が好きなんだなって提案してくださったというのもありますし、コロナ前の開放的な良い記憶がそこにあって、縁とか勘とかにすごく強く結びついて、尾道という場所を選びました。坂があってどうこうとかそういうのは考えていなくて“尾道・渡辺あや脚本・コロナ禍映画”だけで、映画撮ったことないけど、自分の中でとても盛り上がって(笑)、尾道で映画を撮ることに自分がめちゃめちゃ激しく上がったという事実に忠実に従ったという感じです。

――実際に撮影を終えて、いかがでしたか?

須藤蓮さん  もう最高でしたね!めちゃめちゃ良い所で、尾道の良い所を撮ろうと思って映画を作ったわけではないですが、めちゃくちゃ好きな場所ですね。なんでここにこんな文化的に豊かな場所があるんだろうって思うくらい豊かだし、気候も良いし、人もめちゃめちゃ良いし、単純に住む場所としてもとても良いんですが、やっぱり良いロケーションが多いですね。『逆光』ではなるべく、THE 尾道みたいなロケーション選びはしていないかもしれないです。尾道らしいよねというような場所よりは、僕のような旅人の目から見てここが良いと思った場所、歴史とか尾道の人たちの想いとか、そこから断絶した僕が行って良いと思った尾道を組み合わせて、それを尾道と呼ぶような、ある種乱暴な切り方をしているなと思います。本作を観て尾道に行きたいなと思ってもらえたら、それは本望ですし、結局行かないとわからないですよね。

公開する土地へ自ら行って、作品の良さを制作した熱量で届けたい!

――自ら足を運んで作品を伝えるスタイルが素敵です。そこに込めた想いを詳しく教えてください。

須藤蓮さん  たくさんいろんな想いがあるんですけど、この映画ってほっといたら当たらない映画の作り方になっていると言いますか、タイトル『逆光』だし(笑)、脚本は渡辺あやさん・音楽は大友良英さんと2人を前に出して宣伝しようとしているわけでもなければ、そうじゃなくて映画が効率的に広がるっていうことを全く想定しないで、普通に良い役者だから撮る、良いロケーションだから撮るという普通のことを積み重ねて、ちゃんと成功に導く、そのことが最も豊かで面白いことが見られるっていう実験のようなイメージがありました。もちろん、なるべく多くの人に観てもらいたいですが、作品を曲げることは絶対にしない。作品が持っているピュアなエネルギーのようなものをなるべくそのままの形で届けるということが大切だったり、そのピュアなエネルギーを例えば東京から公開して、公開日に合わせて上手いこと積み重ねて、数字を重ねるようなやり方をした時に、この作品を作り上げる過程にあったスタッフと僕らが共有したエネルギーと、そのものすごい輝きみたいものを宣伝という過程において少しでも損なってしまうのが嫌だと思いました。

だったらその地へ行って本気で、僕がこの熱量で話すように同じ熱量で届けて、1つのインタビュー記事やパンフレット1つも徹底的に、ねじ曲がっていない普通のことをやるということをちゃんとやることで1つ成功するという前例みたいなものがもしあったら、インタビュー記事を読んだ人が僕もやってみようかなってなるかなと思って、そういう前例が欲しかったし、自分も見てみたかった。

あとは、コロナでzoomの舞台挨拶とか、『ワンダーウォール』の時はそれしかなくて、その時にも面と向かわないのが嫌だったんだと思います。いろんなzoomのインタビューを作ってそれを編集して人と会えないので粘土でアニメーション作って、それを届けることもやっていました。それはそれで経験としてはすごく良かったんですけど、本当は現場で映画を作って、直接会って届けてってことがやりたいんだけどなって思って、その反動ですかね。zoomで済ませることもできるんですけど、確実に損なわれているものがあると思って、それは結果というよりは自分の中にあって、そういうものを自分なりに確かめているような感じです。お客さんとの会話も楽しいし、一緒に作り上げるのも好きなんですよね。お任せするのももちろんいいんですけど、実際にその地に行くと手伝ってくださる方もいて、一緒にその地域での宣伝を考えてくれて、その宣伝は東京から名古屋に向かってこんな感じでって言うよりも絶対に強度が高いじゃないですか。その土地ならではのものも生まれてくるかもしれないし、人の声も聞きながらできるし、その力を信じています。

自分の想いを形にした映画『逆光』では、いまできるベストを尽くし、また映画を一緒に作り上げたみんなの想いを伝える須藤さんの熱量に心が動かされました。そんなこだわり抜いた本作では、尾道を背景に描く、個性的で魅力的な一人ひとりの登場人物の繊細な感情の描写にも注目です。行きたくなるような尾道の美しい景色、その場の空気、音、言葉にしなくても伝わってくる想いと、感情が揺さぶられる映画体験『逆光』。ぜひ、劇場でご覧ください!

映画『逆光』

監督
須藤蓮
脚本
渡辺あや
音楽
大友良英
出演
須藤蓮、中崎敏、富山えり子、木越明、SO-RI、三村和敬、河本清順、松寺千恵美、吉田寮有志 他
公式サイト
https://gyakkofilm.com/
『逆光』©2021『逆光』FILM.


※掲載内容は2022年5月時点の情報です。
※新型コロナウイルスや天候の影響で、開催予定のイベントは、中止・変更になる場合があります。主催者の公式サイト・SNSで事前に確認して、おでかけください。

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映画『逆光』監督・主演を務めた須藤蓮さんにインタビュー!

WRITER

Mai Shimomura

Mai Shimomura

岐阜県出身。スタジオやブライダルでの 撮影経験を6年経て、編集者へ転身。 カメラと映画が好きなミーハー女子。 素敵な出会いを写真に記録しながら、 みんなの心に届くモノを発信したい。

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