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映画『逆光』の監督・主演の須藤蓮さん×脚本家・渡辺あやさんのトークショーを開催!
#映画

2022.7.2sat

映画『逆光』の監督・主演の須藤蓮さん×脚本家・渡辺あやさんのトークショーを開催!

6月25日(土)より名古屋シネマテークにて上映がスタートした映画『逆光』。監督・主演の須藤蓮さんと、『ワンダーウォール』『ジョゼと虎と魚たち』を手掛けた脚本家・渡辺あやさんの自主製作配給作品で、1970年代の尾道を舞台に青年たちの愛憎のラブストーリーが描かれます。名古屋シネマテークでの公開を記念して、監督と主演を務めた須藤蓮さんと人気脚本家の渡辺あやさんが登壇するトークショーが「TSUTAYA BOOKSTORE 則武新町」で行われました。今回が初監督となる須藤蓮さんの想いや、今作でタッグを組むことになった人気脚本家・渡辺あやさんとの出会い、自主宣伝してきた製作チームだからこそ見えたものなど、作品の裏側や宣伝活動について語っていただきました。その様子をお届けします!

映画『逆光』STORY

1970年代、真夏の尾道。22歳の晃(須藤)は、好意を抱く大学の先輩・吉岡(中崎)を連れて帰郷する。先輩を退屈させないために晃は幼馴染の文江(富山)に誰か暇な女子を見つけてくれと依頼して、少し変わった性格のみーこ(木越)が加わり、4人でつるむようになる。やがて、みーこへの眼差しを熱くしていく吉岡の姿に晃は悩むように―。

ドラマ『ワンダーウォール』での出会いがきっかけで生まれた

――須藤監督と渡辺あやさんの出会いについて教えてください。

須藤監督  今回、『逆光』では映画監督をさせていただきました。元々は俳優活動をしていて、僕が初めて出演していた作品が『ワンダーウォール』と言う、NHKの京都発の地域ドラマだったんですけど、その脚本家が渡辺あやさんだったというのが最初の出会いです。元々は、脚本家と俳優という形でご縁をいただきました。

渡辺あやさん  『ワンダーウォール』というドラマは、京都の地域発ドラマで、1時間でドラマを作りたいと私にお話がありました。撮影までの時間がほぼなくて、実はキャスティングしようにも誰も捕まらなく、そこでオーディションをして、脚本の中に出てくる5人の学生を選びました。その中の1人が須藤くんで、そこからのご縁です。実は、そのドラマが京都に実際にある学生寮をモチーフにしたもので、寮が取り壊されるかどうかを大学と揉めている話で、テーマがテーマだけにドラマが終わった後も、その学生寮がその後どうなるのか、私たちとしてはすごい気になるところで、須藤くんは出演した役者の中で唯一、我が事のように学生寮に対してすごく心配をしていました。
そしてドラマによって、このことに対して少しですが世の中の人の注目を集められたので、これを消さないようにしようとの想いで、『ワンダーウォール』を映画版の『ワンダーウォール 劇場版』にしようと盛り上がりました。音楽の岩崎太整さんや、脚本家の私、NHKの方など、みんなやっている仕事がバラバラなので、私が東京へ行ったときにみんなでミーティングをして、劇場版にする話をずっと進めていました。そこになぜか必ず須藤くんがいて、彼は事務所にしっかりと入っている役者さんなので、マネージャーさんとかには止められていた時もありますが、彼はすぐにやめたくなかったみたいで、いつも話し合いに参加していました。

須藤監督  京都の学生寮を舞台にした『ワンダーウォール』という作品に参加したことが、自分にとってすごく大きな体験で、その作品が大学から壊されようとしている学生寮という場所を守ってしまうような、現実を変えてしまうようなことまで、この作品はしてしまうんじゃないかと期待を持っていて、それを成してしまうまでは『ワンダーウォール』という作品が終わらないような気がしました。4年も前に終わってしまったテレビドラマなんですけど、自分の中ではまだ終わっていない作品、そういう志で関わっていたいと思った作品だったので、この作品をより多くの人に届けたい、この作品をどうやったら知ってもらえるのだろうと、現実を変えるために広げていくことと、作品をより観てもらうということが自分の中ではリンクしていく出来事になっていて・・・
1年ぐらい毎日話していますが、今日が今までで一番トークが下手なんですけど(笑)どうしたんだろう(笑)

渡辺あやさん  名古屋・岐阜というのもあり、小さな作品だったのが、1年間自分たちで自主配給をしているうちに私たちが想像していたよりも活動が面白くなってきて、いろんな方からいろんなことを言っていただけるようになっていて、ついに東海にたどり着いたというのもあり、それですごく緊張しているんだと思います(笑)

須藤監督  気負いすぎですね(笑)。岐阜でも「ぎふ柳ケ瀬夏まつり」が7月23日、24日にあるんですよ。実は、この夏祭りを映画『逆光』チームがプロデュースすることになっているんですよね。自分の映画を広めようと活動していたら、なぜか岐阜で夏祭りをプロデュースすることになったという、その繋がらなさが、自分の中でも整理がつくように、今日は配給活動の説明をさせていただきます。

――お二人が映画『逆光』を作ることになったきっかけも教えてください。

渡辺あやさん  さっきの話にもありました、話し合いに須藤くんがいるなと思っていたら、彼はものを作るということをやりたい人なんだなってことがだんだん見えてきて、役者さんからというよりも興味の持ち方がものを作りたがっている人の感じで、話し合いにも顔を出して、口を出しては、みんなに怒られるようなことを繰り返していました。そして、「僕も脚本を書くので、あやさん読んでください」って、彼が友人と作った映画の脚本が送られてきて、脚本について私にすごく怒られてはまた書き直して、また送り付けてくるということを何回かやっていました。そういうことをしてくる若い人は他にもいて、私もプロなので本気で返していると、大体途中でいなくなってしまうんですけど、彼だけはいなくならずに何回も送り返してくるという根性がありました。
須藤監督  自分の映画をこれから宣伝するときにすみませんが、その時に作った脚本は本当につまらないものでした。渡辺あやさんに知り合う前、役者を志す前に今回の『逆光』の撮影監督をやっている人がその時の映画監督で、僕は出る側で映画を作っていました。遊びのようにその友達と会っては映画を作ることをしていて、面白くない映画を何本か作っていましたが、せっかく渡辺あやさんと知り合えたので脚本を見てもらおうと思って自分の携帯で書いた脚本を送り付けて、ボコボコに言われて、でもめげずに作った60分の映画『only you』が完成しました。なんで僕らが作っている作品が面白くないのかというと、いい脚本がないからだという結論に辿り着いて、そこからいい脚本で映画を作ってみたいって思うようになり、自分で書いた脚本を渡辺あやさんに直してもらうやりとりが始まりました。

渡辺あやさん  彼も忙しいはずなのに、1作を作り上げたので、その根性は認めてやろうって思っていたんですよ。そしたら、次は別の作品を送り付けてきて、それは彼が彼自身の体験を書いているものだってことが読んでわかったので、それは大事にしてあげなくちゃいけない作品だと思って、今までよりも真面目にやりとりをして撮影の準備をしていました。それが2020年の夏で、その時にコロナが来てしまって、渋谷が舞台の映画だったので、撮影はいったん中止になり、彼の仕事もとんでしまい、私も『今ここにある危機とぼくの好感度について』というドラマをちょうど書いている途中でしたが、ドラマもどうなるか分かりませんって言われていてすごくへこんでいたんです。あまりにも元気が出ないから、元気が出ることをやろうと思って、自分たちはものを作る人間だから、ものを作ろうと思いました。1時間くらいの中編の映画なら作れる…監督と脚本という最小単位で始めて、やれるようだったら少しずつ仲間を増やしてやっていこうというような感じで緊急事態宣言の合間を縫って作っていったのが『逆光』です。ただ、この行き当たりばったりの製作が人生で、キャリアの中で一番面白い実験ができたなと思っています。

――1970年代の尾道を舞台にした映画ですが、本作を尾道から配給した経緯や背景も教えてください。

須藤監督  映画を届けていく活動を配給活動と言いますが、大体の映画は東京で配給活動を始めて、順々にもしくは1ヵ月遅れとかで全国に広まっていく。東京で盛り上げて、その余波を地方に広めていくのが常識なんです。今回映画『逆光』の配給を手伝ってくれている関谷さんも元々六本木に会社のあるアスミック・エースさんで配給活動をされていました。その従来の東京からのやり方ではなく、せっかくなら尾道でやるのがいいんじゃないかなとの思いで始めました。これを東京の知り合いのプロデューサーに話したら、誰一人として賛成してくれなくて、リスクが高いと言われたんですよ。

僕も配給会社に最初は作品を持っていて、まさか自分でこの映画を届けるということになる未来は想像していなかったですよ。なので、誰かに託してやってもらうことも考えていましたが、渡辺あやさんが尾道から公開したらいいんじゃないかとおっしゃっていたこともあり、それを配給会社に相談していましたが、東京以外の地域の数字が東京に比べて少ないかを見せてくれて、例えば東京で2万人を動員したら2億円の興行収入、尾道で3週間上映して30人と、いかに今やろうとしていることが無謀なことだと説得を受けたんですよ。それを見て、変だなって思ったのが、『逆光』を製作する過程で尾道の30人くらいの人とは知り合いになっていましたし、僕らの映画は尾道でやって30人ってことはないだろうと思って、今の世間で言うと常識的じゃない、効率的じゃないっておっしゃいますが、そこに自分にとってすごく重要なものが詰まっている気がして、尾道でやってみたらいいんじゃないかとの一言をとにかく信じてみようと思って、信じてみたらどんなことが起きるのか、見てみたかったんだと思います。
渡辺あやさん たぶん勝算があって言ったことではないですが、私は島根県に住んでいて、地方に住んでいる市民として東京の人たちが思っているほど、地方都市の文化って冷えていなくて、私は東京の人ともお話する機会がありますが、人口に対して映画に興味を持っている人の割合とか、熱量とかはそんなに変わらないと思っています。京都や尾道でも映画を観ていただき、感想をうかがいましたが、東京でお話をする業界の人たちに負けないほどの深い意見だったり、すごく興味深い指摘をいただくことが多い気がします。

須藤監督  最初に尾道でやった試写会では、これから僕らは尾道で映画を公開していくので力を貸してくださいって、いろんな尾道の方を集めて行ったのですが、この直前に東京でも試写会をやっていて、そこで結構評判が良くて、これは尾道でやったらすっごい誉めてもらえるぞと思っていたら、車座になってここで突然質問攻めに合うんです。なんでシネスコにしたんですか?とか、なぜ細長いスクリーンを選択したのかとか、なんでこの色味にしたの?とか、東京ではいいんじゃないって言われたけど、ここではそれではすまなくて、この次の日に映画監督はもう辞めようと思って寝込むぐらい、それくらい尾道の人の文化感度って高いんですよね。

渡辺あやさん  尾道はとくに大林監督の影響もあって、本当に街の人たちが映画に対して尊敬が深いと言いますか…(泣いている須藤監督の写真を見て)これは、泣いている須藤監督ですね。

須藤監督  一生懸命映画を作ったのに誉めてもらえなくて、泣いている新人監督の図ですね(笑)

渡辺あやさん  その翌日には尾道の市長訪問も予定していて、その時にあまりにも須藤監督が腑抜けだったので・・・

須藤監督  腹に力入れてって腹パンされた記憶があります(笑)

渡辺あやさん  いろんなことをやってきましたが、とにかく尾道から始めるんだって気持ちで、試写会をしました。業界での試写は記者の方を集めて記事を書いていただくためにするんですが、どちらかというと街のみなさんに観ていただいて、街ぐるみで盛り上げていくためにはどうしたら良いのか相談するような場にしていました。これは全国各地でやっていこうと思っていて、みなさん自分ごととしてこの映画について考えてくださいました。そしたらある時から須藤くんが、「俺は尾道に2カ月くらい住み込んでやるんだ」って言いだしたんですよね。

須藤監督  どうしても30人というのが耳に媚びりついていて、どうしたら30人ではない結果を尾道から公開することで見せられるのかと、小さい脳みそを絞ってみたんですけど、映画の宣伝なんてもちろんやってみたこともなく、劇場がどうやったら映画を流してくれるかとかも全く知らない状態で始まったので、とにかく行ってみて友達たくさん作って全員劇場に来てくれたらひどいめに合わないじゃないかと、そういうことを実現するには、行って泊まるしかないなって思ったんですよね。ある意味浅はかな考えなんですが、とにかく全力で2カ月間その場にいて、毎日宣伝してみるってことをやってみようと思いました。ポスターを300枚くらい持って行って商店街の全部のお店をノックして貼ってみるとか、もうめちゃくちゃ泥臭い宣伝を尾道からやって、その中でいろいろな宣伝プランを考えていきました。

街の方たちからどんどんアイデアをいただき、「逆光ブレンド」が誕生

渡辺あやさん  街の方たちからどんどんアイデアをいただけるようになってきて、リアカーでコーヒーを配ればいいんじゃないって言われて、“フリーコーヒー”を尾道でやってみたら、ここに人が集まってくるようになって、対話がそこに生まれて、それが良かったんですよね。そこで、今度はその対話をイベントにしようと思って、“ダイアログ”というただ対話するイベントで、1つの場所で7人くらい集まって、議長を1人決め、その議長がいま切実に悩んでいることを議題にし、それに対して参加者がそれぞれに意見を言うというもので、ディベートとはまた違っていて、マウンティングみたいなのは禁止で、対話なのでいろんな人がいろんな意見を持っているのを確かめ合うようなイベントを尾道、広島、京都でもやりました。本当に映画の宣伝としてはわかりませんが、参加した人たちがこんな体験は初めてしたと言っていたことが印象的で、飲み会でもこういう話はできなくて、学校とかでもできない、普段はあまり喋らないけどここではこんなに喋れましたと言って帰っていくとか、いろんな場所でいただいたアイデアがイベントになったり、さらに他の土地に持って行ったらそれが進化するようなことがあったり、いろんな街でやっていく面白さだったように思います。今まで業界でやられていた、予算とポスターとチラシだけを各劇場に送って、予算内でできることをやってくださいという宣伝活動では絶対に生まれなかったことだなと思いました。グッズで販売している「逆光コーヒー」もその一つ。

須藤監督  広島で宣伝活動をしている時に、今までの映画の広げ方とは全く違う広げ方をすることで、普段劇場にはなかなか足を運ぶきっかけのない人たちに映画を観てもらおうということをずっとしようと思っていて、今までに見たことのないものをとにかく実験のようにしてきました。「逆光コーヒー」というのは、広島にある人気のコーヒーショップ「マウント コーヒー」の方と僕が知り合った時、とにかく映画を観てくださいって言って、何か一緒にやりましょうって話をふって、そしたら映画の感想をコーヒーのブレンドとして表現してくださって、それが「逆光ブレンド」です。

渡辺あやさん  映画を観た印象をその方はコーヒー語という言葉を使っていましたが、コーヒーで表現するとこんな感じですって、映画の印象をコーヒーで現すというような聞いたことも見たこともないコーヒーをいただいて、コーヒーに詳しいわけではないですが、飲んだ瞬間にこれが『逆光』かもしれないと思う不思議な体験をさせていただきました。お店の方がおっしゃるには、これを映画の公開前にお店で出して、予告としてコーヒーを飲んでもらう、コーヒー予告とおっしゃられていて、映画を観た人がまたそのコーヒーを飲んで、その印象を確かめるという、映画がそんなふうに次の表現に次の形に展開されていくというのが、私はこの仕事を20年くらいやっていますが、初めて聞いたし、初めての体験だなって思って、やってみたら本当にいろんな場所でいろんなことが起こって、とても面白いなと思っています。

名古屋や岐阜でも映画とコラボしたイベントを開催

関谷さん  ちなみに、その「逆光ブレンド」は名古屋でも飲めまして、映画が上映される名古屋シネマテークさんから歩いて1分くらいの所にある「シヤチル」さんで、「逆光ブレンド」と逆光ブレンドを使った「コーヒーフロート」を販売中です。パネル展もやっていただいていて、一つひとつの写真に対して須藤監督が手書きで思い出とかコメントを書いてありますので、映画を観る前や後にぜひ見に行っていただけたらと思います。

須藤監督  先ほどの映画が映画じゃない方向に広がっていく話がありまして、パンフレットも会社に頼んでいるわけではなくて自分たちで、尾道でライターをやっている方と作りました。デザインや何を載せるのか、話し合いながら作って、全国まわっていてもなかなかこんなパンフレットはないと人気になっているもので、それが今度は岐阜のお菓子屋さん「テト」さんが、このデザインをモチーフとしたお菓子にしてくださったりとか、そういう広がりもしています。

渡辺あやさん  自分のキャリアの中でなかなか体験できなかった、純粋に自分が作りたいものを作っていて、普段はプロの脚本家として活動しているので、いろんなところからお話をいただいて、NHKでは企画会議にこの作品をなぜ今やるのかなど、企画書に書けるようなことを考えて、企画意図に叶う企画を考えて作るですが、コロナの中で自分たちが見たいものや作りたいもの、どの会議にも通さなくていいので、純粋にやりたいからという想いで作ったらどうなるのかという実験が始まって、すごく純粋な形でできたなと思います。そういうものが持つ力が必ずあるように思っていて、すごく純度の高いものを届けて、受け取った人がこれだったらできるって、その人の表現を呼び覚ますような力があるんじゃないかなとこういう仕事をしながらずっと思っていました。ただ、映像を作るというものはなかなかお金がかかるものなので、そういうことはなかなかやらせてもらえなくて、自主製作といって自分たちでお金を出しているものだからこそできているのかなと思っています。そして、そういうものをいろんな街でいろんな方へ届けていったら、どういう表現が出てきたかなって、パンフレットもそうですし、普通に仕事としてオファーしたら、なかなかここまで凝ってくれなかったり、時間をかけてもらえないだろうと思います。それぞれの方が主体的に関わってくださっているからこそ、いろんなことが起こっているなと思って、主体性をいろんな人から引き出したかったなと思います。

主体性や能動的に関わることで、みんなでポテンシャルを上げていく

須藤監督  主体的に動くということが自分はできなくて、いまだにきれいな言葉にできないですが、人には受け身と能動態と2種類のエネルギーがあるような気がしています。映画宣伝は東京からしていって、こういうふうにしたら、こういう結果が見込めますと、そういう説得されやすい情報って、その情報を受け入れるような感覚で、結果が見えている成功に向かって足を動かすような、実は何かをやっているようで実は受け身の態勢でやっているような気がしていて、僕はその態勢がどうしてもとれなくて、受け身でやっているとポテンシャルが落ちるというような変な特性があり、自分はそこに敏感なんですよね。なので、自分がそうであるように他の人もそうであるならば、どれだけ能動態に関わってくれるのか、それこそが映画が広がっていく、映画を作っていく、生きていくことだったり、そういう姿勢のようなもの共有していくのが、自分のテーマにもなっています。パンフレットもデザイナーにお願いして印刷にかければ、本当に4日、5日で終わってしまうこともできますが、それが嫌だなって、効率的にすることでなんか失っているものがあるように思います。特にこういう物販とか、映画のポスターやチラシにも映画を作って届ける一つひとつの手順の中に多く見落としているものもあるかもしれないということを、それが非効率であっても見てみたかったんですよね。そうだったことを思い出しました。

渡辺あやさん  私も見てみたかったです。本当に私たちは自主配給としてはド素人で、初めてのことで行き当たりばったりなので、お願いしますと各地の方のお力を借りてどうにかこうにか今日までやってきて、本当に各地でいろんな方が頑張ってくれて、ついに東海に辿り着くわけです。東京の公開の時に私のところにインタビューの依頼がきまして「14歳の君へ」という、中学生へ向けて考えていることを話してくださいという企画だったんですが、インタビューとかは苦手で普段はあまりお受けしていないんですが、これは自主宣伝配給なので、露出したいなと思ってお受けしました。そこで関谷さんが岐阜新聞に載ったのを見てくださって、関谷さんはもともと10何年か前にアスミック・エースさんで働かれていましたが、『天然コケッコー』の配給を担当してくださっていて、結婚を機に退職されて岐阜で主婦をされていたんですよね。十何年ぶりに「あやさん、記事を読みました」とメールをくださって、映画宣伝の仕事が好きで復帰したいけど、岐阜だとなかなかチャンスがなくてと書いていらっしゃって、私はチャンスだと思って、自主配給をやっていることを伝えましたが、なかなかお手伝いしてくださいと言うことができなかったのですが、関谷さんからお手伝いさせてくださいと言ってくださって、できる範囲でご無理ないようにお願いしたら、元プロの勢いですぐに動いてくださって、私たちもびっくりしました。さすが関谷さんはすごいなと思って直接会いに行って、名古屋と岐阜をまわらせてもらいました。名古屋のほうが大きい街なので、名古屋中心にやっていくかと思いきや、そこで柳ヶ瀬の存在が現れました。

“映画の街、柳ヶ瀬”でレトロ映画祭り「ぎふ柳ケ瀬夏まつり」を実現

関谷さん  私は名古屋の出身で、都市部なので人数もたくさんいますし、公開するならきちんと通常の映画宣伝をすれば、名古屋のほうが数字が上がるのはわかってはいたんです。私自身、映画宣伝に復帰したい想いがありましたが、なかなかうまくいかず、それがすごく悔しくて、岐阜で名古屋に負けないような面白いことがやりたいなと思っていました。映画が1970年代を舞台にしていることもあって、柳ヶ瀬商店街の昭和レトロな感じと合って、今ちょっとずつ元気が出てきている商店街を映画の力でまた元気にできたら面白いことが起きるんじゃないかなと思いました。商店街のいろんな方に声をかけ始めたのがスタートで、やっぱり柳ヶ瀬商店街は古くからある場所なので、大人たちの間で話を進めるのが難しく、辞めたほうが良いというご指摘も受けましたが、何か突破口があるんじゃないかと思って、とにかくいろんな方に声をかけて、つながることができた一人の商店街の理事の方が「映画の街でした、柳ヶ瀬は」と言っていただいて、そこから話が進みました。

渡辺あやさん  私たちも何もプランもないままとりあえず行ってみて、いろんな方にお会いして、特に須藤くんがどういうことをやりたいのかとアピールする力が強いので、興味を持ってくださった方から提案をいただき、そこへこちらが全力で食いつくようなことを繰り返し、ついに柳ヶ瀬に。私たちも最初、岐阜に昭和レトロなすごい商店街があると聞いて、70年代を描いた映画となんか面白いことができるんじゃないかなとふわっとしたイメージだったんですが、それが映画で商店街を盛り上げたいと思うみなさんの心が一つにまとまって、じゃあレトロ映画祭りをやろうと1つ決まりました。やると決まったからには、見たことのないような面白いものにしなくてはという、途中から本気モードに切り替えて、これまでいろんな街でやってきたイベントの手ごたえをこの柳ヶ瀬夏祭りに転換するとどうなるだろうって考えたのが、この昭和歌謡ショーです。みなさん、ご存知の歌謡を歌の好きな方に歌ってもらうショーになりますが、着想は東京で一番最初に始めたゴーゴーパーティーから。これも私が言い出したんですが、劇中にもゴーゴーを女の子が踊るシーンがあって、実際に当時のファッションで女の子に踊ってもらったら、当時の人たちにとってこれがどれだけ楽しかったかということが体感として迫ってくる感じがあったんですよね。今は最新のものがおしゃれだとどこか信じこんでいますが、実はそうではないんじゃないかと思って、単なるレトロではなく、まさにここに起こっている風俗として、当時のファッションで当時の音楽で踊ってもらったら実は楽しいんじゃないかと、過去の時代に生きていた人が楽しかったものだけど、今の人たちにも楽しいものなんじゃないかという実験をどうしてもやりたくて、ゴーゴーパーティーやろうって言って、東京と京都でやってみました。

須藤監督  渡辺あやさんの思いついたことが最初は理解できなくて、ゴーゴーパーティーやったらいいんじゃないかって言われて、今でこそ若い人がレトロな恰好をして踊ることを楽しむイベントってわかりますが、最初は言葉とアイデアだけが目の前に突然現れて、それをどう形にするかはわからなかったです。わからないけどやってみると毎回面白くて、例えば昭和歌謡ショーを渡辺あやさんがやろうっておっしゃった時もなぜ昭和歌謡ショーをやりたいのか最初わからなくて、でもこれをなんとか形にしたら面白い景色が見られるんじゃないかと思っています。昭和歌謡ショーはとにかく面白くなりそうです。

渡辺あやさん  私たちの文化って前の時代に対するマウンティングで新しい文化が現れて、過去って敗北していった文化のようなイメージもありますが、実はそんなことはなくて、過去のものを一緒に楽しむってすごく平和なことで、あらゆる世代の人が1つの曲に一緒の気持ちで盛り上がれるってすごくハッピーなことだなってゴーゴーパーティーの時に思ったんですよね。これがきっと昭和歌謡ショーをやった時も起こるんじゃないかと思っていて、出演者の方にも当時のファッションを古着でスタイリングして、メイクも変えてやります。実は私もこんなにやろうって言っておきながら、全然スキルもありませんので、『ワンダーウォール』のドラマを一緒にやっていただきました岩崎太整さんという、有名な音楽家の方がいらっしゃって、お忙しいのでお願いできるような方ではないのですが、お願いしてみたら、全然快く楽しんで興味を持ってやってくださることになり、今は岩崎太整さんと私たちで歌い手の選出から曲目とやっています。カラオケではダメなので、新曲の生バンドを用意しましょうって岩崎さんがおっしゃって、なかなか高いハードルですが、プロとしてやるからには絶対に成功させたいし、お祭りのためにも見に来た方が感じたことのないような、昭和歌謡ショーって本当にいいなと思ってもらえるようにしたい。そこで、これだけの奏者がいりますとか、これだけの練習期間がいりますとか、ものすごくハードルをどんどん上げられたんですが、岩崎さんのような一流の方が最後まで監修してくれるこんな機会はないと、チャンスなのでやりますと関谷さんがおっしゃてくださって、その日からいろんな人に掛け合ってくださり、準備も整いつつあります。これまでやってきた経験値がここで集大成を迎えられると思っています。美川憲一先生もお越しいただけます。
関谷さん  美川憲一さんには、7月24日(日)歌謡ショーをしていただいた後にトークショーもしていただきますが、その相手を須藤監督と渡辺あやさんにしていただきます。お二人もどんな衣装で出られるのかもご期待くださいませ。とても楽しみにしています。

名古屋・岐阜での活動は、一つの集大成

――最後に一言ずつお願いします。

渡辺あやさん  ついこの前に福岡の公開を終えたばかりで、やっと名古屋と岐阜が始まるぞってことで7月23日と24日のお祭りに向けてこれからは準備していきます。実は私は別の連続ドラマの締め切りを抱えていて、ここにいてはいけないのですが、そちらも頑張りつつ、まずは歌謡ショーを成功させべく頑張りたいと思っています。私たちもどうなるか分からないままやっているところもあり、でも絶対に面白くなるというわくわくだけが止まらなくて、ここから1ヵ月を過ごしていくんだなと思うと、楽しみでなりません。ぜひ、岐阜でもお目にかかれたらと思いますし、楽しんで見守っていただけたらと思います。どうもありがとうございました。

須藤監督  言葉が消えるという感覚をたまに得ることがあって、今日は久々にこの感覚を得たなと思います。『逆光』が完成して以来、自分が自分の言葉で語ることがなかなかできないという感覚を久しぶりに得たなと思って、それはこの活動が新しいフェーズに移るタイミングだろうなと思っています。岐阜の柳ヶ瀬夏祭りもそうですし、名古屋でこれからやろうとしている宣伝活動において、まだ言葉を重ね慣れていない試みに入っています。僕の中で宣伝のテーマが1つあって、映画を広げるということを本気で目指し始めたという、尾道から始めて新しい局面に入っていて、その一つの集大成として夏祭りがあるんですが、それが何であるのかは終わってみるまでは分からなくて、だからこそ、これから名古屋で起きることや岐阜で起きることは初めて尾道・広島で公開を迎えられたことと同じくらい新鮮で楽しくて、だからこそ思考停止が許されない苦しさを伴うようなすごい刺激的な宣伝活動にこれから先もなっていくんだろうなと改めて思えて、すごくうれしいです。これからもすごく面白いことになると思うので、もしよかったら温かく見守っていただけたら幸いです。今日はみなさん、足を運んでくださってありがとうございました。

名古屋シネマテークで絶賛公開中の映画『逆光』。須藤監督と脚本家の渡辺あやさんが『ワンダーウォール』という作品で出会ったことから生まれた本作。自主宣伝してきた製作チームだからこそ経験できた面白いことや、人とのつながり。映画を作り終わった後の届ける過程まで大切に自分の言葉や表現で伝えていく、自主製作配給作品ならではの楽しみ方や広がり方、名古屋や岐阜でもこれからどんどん盛り上がっていく宣伝活動に目が離せません。岐阜では、岐阜柳ヶ瀬 のCINEXにて7月16日より公開予定。またトークショーでも話されていました昭和歌謡ショーが見られる「ぎふ柳ケ瀬夏まつり」は7月23日、24日に開催です。ぜひ、お楽しみに!

映画『逆光』

公開日
名古屋シネマテークにて絶賛公開中!
岐阜柳ヶ瀬CINEXは7月16日(土)より公開!
監督
須藤蓮
脚本
渡辺あや
音楽
大友良英
出演
須藤蓮、中崎敏、富山えり子、木越明、SO-RI、三村和敬、河本清順、松寺千恵美、吉田寮有志 他
公式サイト
https://gyakkofilm.com/
『逆光』©2021『逆光』FILM.


※掲載内容は2022年6月時点の情報です。
※新型コロナウイルスや天候の影響で、開催予定のイベントは、中止・変更になる場合があります。主催者の公式サイト・SNSで事前に確認して、おでかけください。

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Mai Shimomura

Mai Shimomura

岐阜県出身。スタジオやブライダルでの 撮影経験を6年経て、編集者へ転身。 カメラと映画が好きなミーハー女子。 素敵な出会いを写真に記録しながら、 みんなの心に届くモノを発信したい。

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