2023.2.23thu
【3/10~16名古屋で公開】今後の活躍に期待!才気あふれる若手映画監督にインタビュー!
3月10日(金)より「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」にて製作された短編映画4作品がミッドランドスクエア シネマで公開。今回、監督を務めた期待の若手映画監督4名に作品へ込めた思いやこだわりをインタビューしてきました。
(写真左より、岡本昌也監督、成瀬都香監督、藤本楓監督、牧大我監督)
「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」とは
『うつぶせのまま踊りたい』岡本昌也 監督
STORY
――監督自身が映画にとりこまれたきっかけはなんでしょうか?
岡本監督 映画を観るのが好きでやりたいと思っていましたが、演劇で褒められたのがうれしくて、映画への気持ちがありながらも演劇のほうをずっとやっていました。でも映画をやりたいと思った最初のきっかけは、『ハリーポッター』だったと思います。大きい劇場と大きい音で映画体験をするということがいいなと思って、配信より劇場で作品を流したい気持ちが強くありました。
――今回の題材を選んだ理由を教えてください。
岡本監督 今回の映画は「詩」をテーマにしていますが、詩も芸術も形の1つであって、論文や本では描けないような曖昧な感性を映画だったら描けるなと思いました。自分の言葉にはできないロジカルじゃない感情みたいなものを扱いたいなと思って、詩を題材にして取り組んでみました。
――タイトルはどのように付けられましたか?
『うつぶせのまま踊りたい』
岡本監督 作品のタイトルは、最初に考えるタイプで傑作になりそうな名前をまず付けます。いくつかその時に案を出したり、今後付けるタイトルのリストから厳選したり。今回の作品はリストから選んで、内容はその後に考えました。
――「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」で映画を制作した感想や印象的だったエピソードを教えてください。
岡本監督 今までアンダーグラウンドでやってきたので、プロの方と一緒にやっていく中で普段観ていた映画はここまで計算されて、細かく作られているんだということに感動。今後自分の場所に戻っても今回の学んだことを活かしていきながら、自分の水準も上げていきたいなと思いました。また、30分の作品を撮り終えた時に本作の完成に近いなと思っていたら、音と画の調整のような編集でそこからの作品の伸び具合に驚いて、むしろここから始まったような仕上げの重要さを途轍もなく感じました。色味を変えた瞬間に“画竜点睛”のような感覚になり、仕上げまで通して映画作りの奥深さをより感じました。
『ラ・マヒ』成瀬都香 監督
STORY
――監督自身が映画にとりこまれたきっかけはなんでしょうか?
成瀬監督 10年前くらいまで韓国に住んでいて、その頃に劇場公開でポン・ジュノ監督の『母なる証明』が劇場公開され、難しい題材にかなり取り組んでいる時期でした。今、映画祭で取り扱われているような移民の問題だったり、ジェンダーのものだったり、それに近いものを当時韓国で取り扱われていて、触発されました。韓国は、熱量の多い文化を作る国なので、そこも日本との違いを感じてすごく惹きつけられました。映画館で映画を観ると、すごく血が湧き上がるような作品が多かったです。演劇もすごく豊かでしたが、特に映画館で映画を観るという経験がたくさんできた時期でした。そこで映画をやりたいなと思って、日本に帰ってきてから映画美学校に通い始めました。
――今回の題材を選んだ理由を教えてください。
成瀬監督 ひょんなことからプロレスにはまりまして、熱量の高いプロレスを映画でもやりたいなと思って、今回の「ndjc」に応募しました。韓国の洗礼を受けた後の性格もあって、はっきりしているところなどは作品にも反映されているかなと思います。
――タイトルはどのように付けられましたか?
『ラ・マヒ』
成瀬監督 「ndjc」に応募した時から『ラ・マヒ』を付けていました。そもそも『ラ・マヒ』は、技の名前で「ラ・マヒストラル」を縮めた言い方。あまり知られていない言葉をタイトルにすることでどんな印象を受けるのだろうと悩むこともありました。「ラ・マヒストラル」はスペイン語で“あっぱれな技”という意味があります。「ラ・マヒ」を作中に入れるか最初は撮影監督さんとも結構悩みましたが、インパクトのある盛り上がるシーンに入れることになったため、タイトルとしてもいいなと思いました。また、主人公の彼女たちが“私の人生はこのままでいいのか”と壁にぶち当たる物語でもあるので、彼女たちに“あっぱれな人生”を送ってもらいたいなという気持ちも込めて『ラ・マヒ』というタイトルが物語を統括してくれるかなと思って付けました。
――「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」で映画を制作した感想や印象的だったエピソードを教えてください。
成瀬監督 プロレスのシーンを撮るのが初めてだったので、スケジュールも予測でやるしかなかったのですが、様々なスケジュールの関係でプロレスのシーンを初日に撮りました。最初の試合とクライマックスの試合も含めて1日で撮影。かなり準備して臨みまして、1日で83カットと結構驚いてくださる数字を撮影できて、よくやったなと思います。また、助監督さんが素晴らしかったです。プロレスの試合のシーンは周りのエキストラの方がどれだけ盛り上がっているか、演出できているか、いき届いているかでものすごく差が出ます。準備段階の時に2択を迫られまして、満杯に見せたいからエキストラを150人雇って美術の予算を下げるか、エキストラを50人にして美術を豊かにするかどっちをとりますかと言われました。ここは美術もちゃんとやらなきゃと思い、エキストラを50人にしてもらいました。結局、助監督さんがものすごく盛り上げてくれて、ライティングも、カメラマンさんのカメラワークも素晴らしくて、満杯に見えるような画が撮れました。エキストラを先導してくださった助監督の方に頭を下げて「プロの技を拝見しました」と伝えたほど。演出をいき届かせるための現場作りがやっぱりすごいなと思いました。
『サボテンと海底』藤本楓 監督
STORY
――監督自身が映画にとりこまれたきっかけはなんでしょうか?
藤本監督 小学生の時から映画が好きで、コメディ作品をよく観ていました。小学校6年生くらいの時に『スウィングガールズ』を観て、中学でドラムやりたいなと思って吹奏楽部に入り、高校では『リンダ リンダ リンダ』を観てバンドやりたいなと。その後、高校2年生くらいの時に1つ上の学年にいたシネフィルの男の子が留年してきて、その彼の影響を受けて映画を観るようになったり、一緒に夏休みに映画を撮ったりしていました。そして、偶然なのですが、その時に一緒に映画を撮っていたメンバーの1人が今作の撮影助手をしていて、数年ぶりの再会を果たしました!そして、大学では演劇を学びながら、自主制作の仲間と映像を作っていましたが、美術大学へ行ったため、美術部として現場に呼ばれることが多く、監督できる機会はありませんでした。監督として企画から作ってみたいなとずっと思っていて、初めて応募した「ndjc」で運よく拾っていただけて、映画を撮ることができました。
――今回の題材を選んだ理由を教えてください。
藤本監督 大学卒業後、演劇の勉強だけでなく映画の勉強もしっかりしたいなと思って、東京藝術大学の映画専攻のプロデュース領域に入りました。2年間制作部の仕事を勉強し、卒業後にプロデュース領域で先生をしていた桝井省志さんにお声がけいただいて今の仕事をしています。そこでサポートしている学生の自主制作の映画にご出演していたのが、宮田佳典さんでした。宮田さんが面白いなと思って、彼に当て書きしました。
――タイトルはどのように付けられましたか?
『サボテンと海底』
藤本監督 クランクインの1、2週間前に最初に付けたタイトルから変更があり、考え直しになりました。スタンドインをやっている人の話だからスタンドインかな?でも職業にそこまでフォーカスを当てていないのでどうしようかなと悩んでいましたが、平行して美術やロケハンもやっていて、部屋に置く物の相談をしていました。その時にずぼらな人でも育てられるようなサボテンみたいなものはあってもいいかもと話して、サボテンを置くことになりました。サボテンって自分の身を守るために分厚い皮で自らを覆っていて、水も少しあげるだけで育ってくれて、水をあげすぎると弱ってしまうようなところが主人公に似ているなと思っていて、サボテンいいなと思い始めました。あとは、最後にプールが出てくるので水っぽいのがいいなと、そこで劇場中にちらっと出てくる海底という言葉を持ってきて『サボテンと海底』に落ち着きました。
――「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」で映画を制作した感想や印象的だったエピソードを教えてください。
藤本監督 今まで美術スタッフとして現場で関わることが多かったので、監督ってわがままだなとか、なんで早く決めてくれないんだろうって思っていて、それが作品にも出ていると思います。でも意外と監督は考えることが多いことに気づきました。作品の中で描いたように監督の頭の中にあるものが全てで、それを実現させるために動きたいけど技術も追いついていないから、止まってしまう。今回はプロフェッショナルな方が脇を固めてくださって私が唸っていても助監督さんがパターンを出して選択肢を用意してくれて、とても救われました。助監督さんだけでなく、技術部の方やカメラマンさんも提案してくださって、学生の時にやっていたものとは全然違うと思い、とても勉強になりました。次からはもっと人間味のある監督を描けると思います。
『デブリーズ』牧大我 監督
STORY
――監督自身が映画にとりこまれたきっかけはなんでしょうか?
牧監督 ドラマの『スタートレック』を幼少期から観ていて、中学時代からは、食事時には必ず『スタートレック』を観るようになりました。他には『千と千尋の神隠し』など、映画を観ることを続けていたのが一つあるのかなと思います。大学時代は、現実逃避になんとなく映画を手にとって観ていたら止まらなくなって1日中観ている期間がありました。その時に最後に観た『ホドロフスキーのDUNE』は、制作スタッフの仲間を集めていくようなストーリーで、それにすごく憧れていました。映画を直接的にやっている友人はいなかったですが、絵が描ける人や、音楽をやっている人、写真をやっている友人がいたので、みんなの力を合わせれば作れるんじゃないかと思いました。そこで、一軒家をみんなで借りて住んで、映画を撮ろうと口説いて、5分ぐらいの作品でしたが、自主映画を作ることができました。
――今回の題材を選ばれた理由を教えてください。
牧監督 最初に作った自主映画は、予算5000円で作りました。ひよこが出てくる作品で、そのひよこをクレーンゲームでとるために2000円使いました。全然とれなくて、予算の2/5がひよこに。今回は、5000円に比べたら信じられない予算だったので、いつもと違った大きいことをやりたいなと思って、幼少期に観ていた『スタートレック』的な和製SFにチャレンジできたらなと思いました。
――タイトルはどのように付けられましたか?
『デブリーズ』
牧監督 最初は『デブリーズ』という漫画を友人と書いていました。宇宙ゴミがある星があって、その星に民族がいたらいいなと。そもそもゴミの価値がわからない異星人が、全然違う用途でゴミを使っていたり、民族的な仮面を付けていたりと考えていました。タイトルの根源は、スペースデブリのジャパニーズを表現して「デブリーズ」。宇宙を舞台に脚本を書いていましたが、現実の世界からワープして戻ってくるパラレルワールドのような話で進めていきました。「スペースデブリ」は、厳密に言えば、塵などのことを言いますが、本作の舞台はスクラップ工場なのでタイトルをそのままいくのか最後の最後まで悩みましたが、そのままにしました。また綴りについても読み方などを考えた時に造語にしたほうがいいなと思って、最終的に『DEBRIZ』にしました。
――「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」で映画を制作した感想や印象的だったエピソードを教えてください。
牧監督 一番学んだことはコミュニケーションの重要さです。言葉にできないことを伝えなくてはいけないので、そこに僕は苦戦しました。一番思い出深いのは衣装の制作をしていた時。1カ月で衣装を作ったのですが、ゴミを集めるところから始めて、最初から設計図が書けないため、その場にあるゴミを組み合わせて作りました。友人を引き入れて衣装作りをしていましたが、ゴミを使ったエイリアンということと、民族を撮影する写真家・シャルル・フレジェのようなイメージで表現してほしいという注文だけ伝えて、ほぼ新しいものを作りました。僕の頭の中を伝えるためには、とにかく長い時間を一緒に過ごして作っていきました。その土地ではこういう文化はないとか、ボンドは使わないとか、みんなで話していくうちにルールがだんだん決まっていくことで、新しいものが作れているという自信が持てるように。制作メンバーとなるべく長く一緒にいて、信頼し続けるということが映画制作において重要だなと思いました。
監督のそれぞれの着眼点で描く個性的な作品たち。どの作品も世界観や表現、メッセージ性が異なり、楽しめること間違いなし。今後も目が離せない才気あふれる若手映画監督。ぜひ、劇場へ足を運んでみてください。
ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022
- 上映館
- ミッドランドスクエア シネマ
- 期間
- 3月10日(金)~16日(木)
- 時間
- 連日18:00~
※1日1回、4作品まとめて上映。3月11日(土)のみ、上映後に監督による舞台挨拶予定
- 料金(税込)
- 一般1300円、学生・シニア1100円
- 公式サイト
- http://www.vipo-ndjc.jp/
- 配給
- 特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)
ⓒ2023 VIPO
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