寒くない顔をしていたけど、震えるほど本当に寒かった湖のシーン
坂口さん 僕は寒くて景色どころじゃなかったです(笑)。映像ではふわぁとした顔をしているんですけど、本当に寒かった!あの日は。監督がチョイスした未山の衣裳が薄いんですよ(笑)。これは寒いな~と思いながら、寒くない顔をしていましたけど(笑)本当に寒かったんです。
伊藤監督 あんな素肌のような服着てね(笑)
坂口さん あれは着てないようなものですよ(笑)
伊藤監督 着てないね(笑)。あそこは標高も高くてちょうど前日に雨も降っていたりして、あまりにも寒くてスタッフたちはみんなコート着て、震えながらやっているのに、坂口くんは震えることもないし、鳥肌も立たないし、本当にすごいなと思いました。
坂口さん いや、鳥肌は立ってる(笑)
伊藤監督 え!鳥肌立ってたの?(笑)
坂口さん 立ってますよ(笑)。僕もめちゃくちゃ震えていましたよ。
伊藤監督 プロ根性がすごいなと思いました。大事な芝居なので結構何度もやらせてもらってね、本当に頑張ってもらいました。
未山の人生を清算する旅路のような感覚で演じていた
――他の共演者さんの印象なども教えてください。
坂口さん 実日子さんは本作では、陽の部分を請け負ってくれて、飛鳥ちゃんは陰の部分で、未山ももちろんそうなんですけど、やっぱり未山にとっても莉子にとっても、詩織にとってもお互いがいて初めて成立すると言いますか、完璧な人たちではないので、どこか欠けている部分があって、その部分を彼女たちが埋めてくれるような感覚が撮影中はありました。ニュアンスだったりとか、未山の芝居で言うと、相対する役者さんだったりと、未山は変化のあっていい男の子だからと監督が最初におっしゃっていました。
僕は未山像を考えてクランクインしていましたが、逆にそれを一度手放してみて、実際に現場で生まれる空気感だったりと、お芝居を大事にしてみようと思って。実日子さんがお芝居をしている時は、詩織さんといる未山になるし、莉子ちゃんといる時は莉子ちゃんといる未山になるし、僕の未山の捉え方って、彼の語られていない過去の人生だったり、なんとなく清算する旅路のような感覚がありました。
最後のストーリー展開では、未山の中でも大きな落としどころを見つけたんだなという、そんな感覚を持ちながらお芝居をしていたかもしれないですね。
伊藤監督 未山が周りをすごく感じ取る能力があるので、相手に対して相手に合わせたコミュニケーションのとり方をする、それを自然とやってしまう人だったのですが、詩織だけは受け取るものがもう少し大きい。未山が家で着ている服のパーカーは黄色と薄紫色なんですけど、あれは普段着ている服は白いのに、詩織のカーテンの色がまるで染まっているような服にしています。
観る人で捉え方が違って、観る日によっても違う映画になる
――お話を聞いていると隅々まで観たくなりますね。最後に一言お願い致します。
伊藤監督 たくさんの人に観てもらいたいと思っている映画なので、気に入っていただけたら周りの人にちょっと内容は言いづらいかもしれませんが、おすすめして下さるとうれしいです。本日は観ていただき、本当にありがとうございました。
坂口さん 今日はエイプリルフールじゃないですか。なんか言おうかなって、幸せな嘘がつけたらいいなと思っていましが、先にこれ言っちゃうと全然だめですね(笑)。
今日はみなさん、ありがとうございました。この作品は、本当に観る人で捉え方が違うし、観る日によっても違うと思うんですよね。この前、市川実日子さんが初めて観た時と、完成披露試写会の前に観た時とでは、作品に対するイメージが全然違って、違う映画を観ているみたいだったとおっしゃっていて、そんな映画ってなかなかない気がするんです。監督が今回挑戦している説明をあえて省くことだったり、みなさんにこう感じでもらおうとみなさんだけの『サイドバイサイド』ができたらいいなというような気持ちが今の映画界や作品作りにすごく必要なことだなと僕は思っています。ジャンルが明確にある作品ではないので、すすめ方が難しいと思いますが、みなさんの中で今回観た感覚を大事にしていただいて、本作の奇妙さや面白さみたいなところを周りの方々に伝えていただけたらうれしいなと思います。今日はありがとうございました。
いまの自分の隣にいる人、過去に隣にいた人、ずっと隣にいる人など、いまの時代だからこそ大切な人との関係性を改めて考えたい、多くを語らず、受け取る側の気持ち次第で自由に考えられる本作。人と人の距離感や人物の服装の色に心情を反映させるなど、細かく丁寧に描かれたシーンにも注目です。長野の自然たっぷりの景色に癒されながら、この春を彩る切なくも美しい物語をぜひ大きなスクリーンでご覧ください!
サイド バイ サイド 隣にいる人
- 監督・脚本・原案
- 伊藤ちひろ
- 企画・プロデュース
- 行定勲
- 音楽
- 小島裕規 ”Yaffle”
- 主題歌
- 「隣」クボタカイ(ROOFTOP/WARNER MUSIC JAPAN)
- 出演
- 坂口健太郎、齋藤飛鳥、浅香航大、磯村アメリ、茅島成美、不破万作、津田寛治、 井口理(King Gnu)、市川実日子 他
- 公式サイト
- https://happinet-phantom.com/sidebyside/
©2023『サイド バイ サイド』製作委員会
日本福祉大学×映画『ロストケア』公開特別授業に松山ケンイチさん、長澤まさみさん、鈴鹿央士さん、前田哲監督、原作者・葉真中顕さんが登壇!
3月24日(金)より絶賛公開中の映画『ロストケア』。第16 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真中顕さんの『ロスト・ケア』を原作にした介護がテーマの社会派エンターテインメントです。監督は、映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』、『そして、バトンは渡された』を手がけた前田哲監督。松山ケンイチさんと長澤まさみさんが初共演した、二人の魂がぶつかり合う対峙するシーンにも圧巻です! 介護士でありながら、42人を殺めた殺人犯・斯波宗典に松山ケンイチさん。彼を裁こうとする検事・大友秀美に長澤まさみさん。大友と共に斯波を追う検察事務官の椎名幸太を鈴鹿央士さんが演じ、現代社会の家族のあり方と人の尊厳の意味を問いかける本作。 今回、日本福祉大学の美浜キャンパスにて、映画『ロストケア』を題材に介護について学ぶ公開特別授業を実施。授業には、松山ケンイチさん、長澤まさみさん、鈴鹿央士さん、前田哲監督、原作者・葉真中顕さんが登壇し、20年以上にわたって介護殺人の研究に取り組んできた社会福祉学部の湯原悦子教授と学生さんと共に学びました。 介護問題をリアルに映し出す本作は、フィクションでありながらフィクションで終わらせてはいけない 本作を観た湯原教授のゼミ学生からは、「介護殺人の映画ということで、私自身が13歳から17歳の約4年間在宅介護をしておりまして、映画内での親子の言い争うシーンなど、私の家庭でもわりと日常的にあったので、介護者も被介護者も過剰な演出ではなくて、リアルな家庭の問題を映し出しているなと感じました。介護を経験された方は共感でき、そうでない方も外から見えない家庭の問題を知ってもらうきっかけとなる映画だったと思います」と感想を語りました。 別のゼミ学生からは「この映画はフィクションで終わらせてはいけないと強く感じました。映画の始めにある刑務所の話も実際にあり、映画の中での認知症の問題や、介護の限界は、日本で現実に起こっています。映画で“見えるものと見えないもの”じゃなくて“見たいものと見たくないものがある”とういうセリフが印象的でした。“見たくないもの”こそ、大事なものであって、社会福祉学生としてそういったところに目を向けて、どのような解決方法があるのか、介護されている側もそうですし、介護者が幸せに暮らせるためにどうしたらいいのだろうと、考えていかなければならないと強く感じました」とコメントしました。 介護者の背中を押したり、介護について考えるきっかけに 湯原教授 学生と同年代の鈴鹿さん、コメントを受けていかがでしょうか? 鈴鹿さん 僕よりしっかりと感想を述べていらっしゃるので、しっかりと観ていただいて本当にうれしい気持ちとありがたいなという思いがあります。映画だからフィクションだけど、フィクションでとどめてはいけないと、問題提起にしっかりなっていて、そこまで届いていたんだなと思いました。僕の地元ではまだ実際に介護をしたことがない人が多い世代ですが、介護されたことのある方の背中を押し、介護に触れたことのない人も映画で介護について考えるきっかけになってほしいなと思っていましたので、全て言ってくれました。 湯原教授 若い方々にとっては、高齢者介護の話は聞いていたけれども、自分はそこまで経験ないなって人も多いかなと思います。本学の場合は学生さんの中に介護経験があって、その思いを元に福祉を学びたいと思われた方や、実際にそうなられる方がご兄弟にいて、ご兄弟も介護が必要など、ヤングケアラーとして過ごされてきたという方もいらっしゃいます。鈴鹿さんが今お話ししてくださったように、若い人にこちらの映画を届けることができて、実はあまり知られていない若いケアラーの人たちに対しても非常に世の中の気付きが広まるという点で、すごく意味のあることなんだなと思っております。 湯原教授 特に印象に残ったシーンも教えてください。 鈴鹿さん 綾戸智恵さんが演じられていたように、刑務所に入れてほしい高齢者の方も実際にいるというのを聞いて、あのシーンは撮っていて不思議な感じでした。監督はどうでしたでしょうか? 前田監督 実際にそういう方もいらっしゃるので、あのシーンから本作を始めたいと思っていましたし、そういう方がいらっしゃるということも知っているようで知らない方もいらっしゃいますので、そのように感じてもらえて良かったと思います。 湯原教授 あのシーンは、私もとても印象に残っているシーンで、今作は介護をテーマにした映画ではありますけれども、高齢者問題はそれだけではないです。犯罪をする方も犯罪をしないと生きていけない、そういう何か理由があるのかなと思いを馳せていただけるといいかなと思っております。問題提起ありがとうございます。 次のページ 葉真中先生自身が当事者となり、介護と向き合った経験から生まれたもの 葉真中先生自身が当事者となり、介護と向き合った経験から生まれたもの 湯原教授 葉真中先生の『ロスト・ケア』を原作にした映画ですが、本作を書かれた年代は、高齢者問題として介護保険が導入された後に本当に様々な混乱が起きました。一番大きな介護事業者が突然なくなる事態もあり、とても動いていた時代でした。こちらの作品が生み出される背景に葉真中先生の経験など、どのような思いがあったのか、お聞かせください。 葉真中先生 『ロスト・ケア』がデビュー作となりまして、出版されたのが10年前、執筆していたのは15年ほど前になります。介護問題にものすごく混乱があった時期で、その時に私も家族の介護をする当事者になりました。まだ30代でしたが、何も準備もしていないのに突然やってきました。当事者になってわかったのは、介護と言ってもいろんなレイヤーがあって、しかも当時は日本社会で格差と言われるようになった時代で、そういう格差ってこういうところにくるんだと本当に現場でたくさんの人の事例を見る中で思いました。お金だったり、家族間の密度だったり、ちょっとしたことで同じような状況なのに人と人との間にものすごく格差が開いていて、同じ世代で生まれて、同じくらいの親を持って、同じような病気になったのにAさんとBさんとで天国と地獄みたいになってしまう。そこに業界の混乱が重なって、これはすごいことになっているなと肌で実感しました。当時、これを小説にしようと思って書き始めました。 湯原教授 ありがとうございます。葉真中先生自身が当事者として、この時代に介護に向き合われたということですね。本当に原作の中でも介護の状況がリアルに描かれていて、映画の中でも斯波の介護を通じて胸を痛めたり、いろんなことを考えたりされていたのではないかと思います。 世の中の様々な問題に対して、まずは興味を持ってもらうことが社会を動かす原動力になると信じている 湯原教授 本作を映画化するにあたり、介護以外に高齢者の犯罪の問題もありましたし、大友の父の孤立死という大きな問題提起もありました。 前田哲監督 2013年に原作と出合って、憤りのようなすごく熱い思いを感じ、映画化しなければいけないなと思い、松山さんとやりましょうと話を進めていきました。今でこそ“ヤングケアラー”という言葉も言語化されてきましたけれども、それまでは、知らない間にそういう状況に陥っている人もいたと思います。少しでも社会が良くなるように、誰しもが幸せに暮らしていけるように、映画の力は未知数ですが、映画を観た人が映画を観たことを話題にすることが、一つのきっかけになる。ニュースでも見出しだけで素通りしていた人が内容を読んでみるなど、興味を持ってもらうことがやっぱり社会を動かす原動力になるのではないかと、僕は常に思っています。そのために映画というエンターテインメントの入口が少しでも役に立てるのではないかなと思って、作っています。 湯原教授 世の中のいろんなところで実はいろんな問題があって、苦しんでいる人がいるというところで、私たちはかなり無自覚なのかもしれません。無自覚でも生きてはいけるのだけれども、本当にそれでいいのかなと、それを投げかけるのは私たちのような研究者の役割の一つでもありますが、なかなか人々に届かないところもあります。私も研究テーマについてお話をさせていただいておりますが、やはり来ていただく方はある程度関心がある人になってしまいます。それだけでは社会は変わらない。この映画で素晴らしい演技をされるみなさまが出てくださったことで、今まで介護問題に対して目を向けてこなかった人にも注目していただけるきっかけになったと思います。この問題に対して、私宛の問い合わせも多くなり、それも一つ社会の動きとして大きく、影響力を感じでおります。 湯原教授 さらに介護殺人について掘り下げていきたいと思います。ゲストのみなさまもよろしいでしょうか? 松山さん 大丈夫です! 湯原教授 松山さん、ご協力ありがとうございます。もし私のゼミでしたら、ゼミ長に指名したいです(笑) 次のページ 介護の限界を迎えた斯波に対して司法は何ができるのか、とても難しい問題 介護の限界を迎えた斯波に対して司法は何ができるのか、とても難しい問題 湯原教授 長澤さんは、検事の大友役を通じてこの問題をどう考えればいいのか?映画の主題歌にもなっている“そうであろう”という意味の「さもありなん」という言葉もありますが、本当にそうでいいのか?検事の貫く正義を問いかけてくださっていました。斯波に対して、どのような刑罰が必要かと考えられますか? 長澤さん とっても難しい質問ですが、斯波がした行為というのは、やはり許されるものではないと思いますし、厳しい刑罰を受けるということは必要なのかなと思います。だけど、斯波自身が自分の犯したことに対して、これは“救い”だと、彼の正義を元に語っていて、法的な刑罰を与えても、斯波にとって罰として捉えられるのが難しそうに思います。斯波自身も父親を憎んでいたわけではなくて、すごく大切にしていた存在であったからこそという、彼の正義があるという部分もまた難しくて、斯波と同じような事件が年々増えているようなことを聞くと、やはり解決するにはとても難しい問題だなと思います。 そういったところも踏まえて、悪いことをしたから罰を与えるだけではない考えを、今後考えていかなくてはいけないのかなと思いました。一言でこうしたほうがいいというようなはっきりとした答えは言えないですが、そういったこともまた変わっていくのかなと思いますので、都度考えていかなくはいけないなと思いました。 湯原教授 ありがとうございます。本当にすごく難しいことを聞いてしまったなと思いますが、斯波は“救い”だと語っていて、自分のしたことに対して、罪悪感を表に出していません。原作でも繰り返し問われている部分になっていて、斯波がこのままかなり重い刑でずっと刑務所にいるようなことがあった場合に、斯波はこの時間をどう過ごすのか、どういうふうに居続けるのかとも思います。司法が斯波に対して、何ができるのか、本当に長澤さんがおっしゃったように難しい問題で、個別に考えていかなければならない問題だと思います。 みなさんは映画を観たので、斯波の背景を知り、考えを知り、その中で考えているかと思います。でも先ほど新聞の話もありましたが、新聞ではやったことや内容があり、それに対してこういうことになったという情報だけなので、その背景にも目を向けてほしいと思います。 介護の課題をたくさんの人と共有していくことで、救われる命が増える可能性がある 湯原教授 松山さんは、プロセスをたどりながら、愛する父親に対して犯行を行い、“救い”という考え方で犯行を重ねていく役でした。介護者が直面する困難が様々な角度から描かれていて、特にここが大事だとか、みなさんにぜひ知ってもらいたいとシーンを教えてください。 松山さん 異常者ではないというのを大事に、斯波はみなさんと何も変わらない、僕とも変わらないということをすごく意識しました。柄本明さんが演じるお父さんと斯波は、母親や親族もいない親子で孤立化しやすい状況ではあったのですが、小さい頃から男手一つで育ててきてもらったのだから、今度は自分が返す番だと一生懸命介護をしていく。その中で限界がきてしまって、選択肢の一つでもあった生活保護を申請しに行くが断られてしまう。そこで残った選択肢というのが、柄本さんが伝えていた「自分を殺してくれ」という言葉だった。 外側から見ていると、法律やルール、社会の常識でしか物事が見づらいので、事件ということだけを見て、何でこんなことになったんだろう、誰か助けてあげれば良かったじゃない、助けを求めれば良かったじゃないと、思ってしまうと思いますが、そうではない状況が内側にあります。立場によって見ている景色が全く違うんですよね。それを防ぐために斯波ができたことは、誰かとこの話を共有する、介護をしていることを共有することだったり、どういったセーフティーネットがあるのか調べることだったりと、選択肢を持っといてほしかったなと僕は思いますね。 ただ、それも結局余裕のある人ができて、余裕がなければそれすらもできない、本当に今目の前にあるお父さんの介護で精一杯になってしまう。ある意味子育ても一緒だったりすると思います。周りの人たちが孤立化させないというのもまた一つ大切になってくる。 みなさんも介護の経験をされたりとか、これから介護の仕事に関わってくることになるかもしれませんが、こういう素晴らしい大学で学んでいらっしゃるみなさんですから、知識を持って目の前にある介護の課題をたくさんの人と共有していくことで、介護する側も介護される側も救われる命が増える可能性があります。学んだ人だけが見えている問題ではなくて、たくさんの人が見ていかなくていけない課題で、そういうところが大事だと思いました。 湯原教授 ありがとうございます。本当に異常さがないというところは大事なことで、私も何人もの介護殺人の加害者の方に出会ってきましたが、みんな一生懸命に介護しようと思っていて、普通の生活をしていたけど、こうなってしまったという人でした。私もこの斯波が誰かと共有できる人がいたら良かったなと観ていてつくづく思いました。最後にスライドでまとめたいと思います。 一人でも多くの人がこの社会問題に関心を持ち、個として考えること ――斯波の第一の事件を防ぐとしたら、どんなことで防ぐことができたのか。 湯原教授 まず、斯波の第一の事件を防ぐとしたら、どんなことで防ぐことができたのか。介護殺人の中でも防げる事件と防げない事件があると思っています。今回のこの事件は非常に難しいです。なぜかと言うと、斯波はできる限りの努力をし尽くしていた。介護殺人の法廷でも「自分は精一杯できることをやったので、一体何を反省したらいいのかわからない」と述べる被告がかなりいます。父親が息子へ殺してくれと頼んでいる。介護当事者の努力による状況打開は見込めない、父親がいくら努力しようともこの状況が良くなったかと問われると非常に難しいと思います。 かなり貧困な状況でしたので、介護サービスを使うことに関してもサービスの利用料が払えない状況で、使用できなかったのではないかと。高齢者への虐待防止法、障害者への虐待防止法などもあり、もし斯波が虐待していて通報されていたら、外部の支援が入りました。でも今作では、そういうことはしていないため、孤立していったのだと思います。唯一斯波が助けを求めたのは、生活保護の申請へ行った時、この時に斯波は助けを求めていました。でも、あなたは働けるでしょと言われてしまった。生活保護の行政からしたらしょうがなかったと言われるかもしれませんが、ここでみなさんにぜひお願いしたい。支援者としてこういった方をサポートする時は、目の前にいる人の背景にぜひ思いを馳せてください。なぜ働ける人はここにいるのかなど。介護者が力尽きないようにする、私は支援者として行った斯波のケアはとても素晴らしいと思いました。自分がやってもらえなかったことをやっている。葬儀での介護者への言葉がけもよく頑張られました。これは介護者としてかけてもらいたい言葉だなと思います。 そして、要介護者のみならず、介護者への支援が必要だということをぜひわかっていただきたいと思います。介護者自身の健康は大丈夫か。きっと斯波もこの介護が始まる前は東京で働いていた普通の若者だったんでしょう。介護者が大切にしたい自分の時間や大切な人と過ごす時間のためにも、良くなってほしいなと思います。介護者自身の人生、例えば、あのままお父さんを看取ったとしても斯波は仕事をしていないし、お金も持っていません。これからどうやって生活していくのか、とても辛い状況であります。それもぜひ気にかけるということが必要です。 介護者を支援するための法律は、全国的なものは今はまだないのですが、条例が立ち上がっています。何よりも大切なのは、このような高齢者の調査、介護者支援が充実する法的なものもさるものながら、一人でも多くの人がこの社会問題に関心を持ち、個として考えることです。今回の『ロストケア』でメッセージを伝えることができ、本当に期待しています。みなさま、ありがとうございました。 映画『ロストケア』を通して、高齢者問題や介護殺人など、どう向き合っていくべきなのかと公開特別授業で呼びかけました。校内には、大きなパネルも設置され、公開特別授業後には多くの人が撮影する場面も。今後の課題として、介護問題について深く考えることのできる授業となりました。決して他人事はない、今考えるべき社会問題に向き合った衝撃の感動作。柄本明さんが演じる父と、斯波の迫真に迫る親子の葛藤するシーンにも注目です。目を背けず、社会問題としっかり向き合う本作をぜひ劇場でご覧ください。 STORY 早朝の民家で老人と訪問介護センター所長の死体が発見された。捜査線上に浮かんだのは、介護家族に慕われる献身的な介護士・斯波(松山)だった。検事の大友(長澤)は、斯波が勤める訪問介護センターで老人の死亡率が異常に高く、彼が働き始めてからの死者が40人を超えることを突き止める。真実を明らかにするため、斯波と対峙する大友。斯波は自分のしたことは「殺人」ではなく「救い」だと主張する。彼が多くの老人を殺めた理由や、彼が言う「救い」の真意とは何なのか?そして彼女は、法の正義のもと斯波の信念と向き合っていく―。 ロストケア ミッドランドスクエア シネマ他で絶賛公開中! 監督 / 前田哲 原作 / 葉真中顕「ロスト・ケア」(光文社文庫刊) 主題歌 / 森山直太朗「さもありなん」(ユニバーサル ミュージック) 出演 / 松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、峯村リエ、加藤菜津、やす(ずん)、岩谷健司、井上肇、綾戸智恵、梶原善、藤田弓子、柄本 明 他 公式サイト / https://lost-care.com/ ©2023「ロストケア」製作委員会 ※掲載内容は2023年3月時点の情報です
メ~テレ60周年映画『女子大小路の名探偵』主演・剛力彩芽さんの弟役に醍醐虎汰朗さんが決定!
地域みっちゃく生活情報誌(R)『NAGOYA FURIMO』『GiFUTO』『たんとんくらぶ』で長期連載し、2021年9月に書籍化された『女子大小路の名探偵』がメ~テレ60周年映画として映像化!『アンフェア』シリーズや『サイレント・トーキョー』など、話題作を数多く手がけた秦建日子さんが名古屋・岐阜を舞台に描く痛快ミステリーエンターテインメントです。連続犯罪事件に巻き込まれた姉弟が地元愛あふれる仲間たちの助けを借りて真犯人に迫っていくストーリーで、原作者である秦建日子さん自身が脚本も担当し、2023年公開予定。 この度、剛力彩芽さん演じる主人公・広中美桜の弟で、女子大小路の私立探偵を自称する広中大夏役として、アニメーション映画『天気の子』の主人公・森嶋帆高役で注目を浴び、近年では映画『野球部に花束を』や『カラダ探し』、舞台『千と千尋の神隠し』ハク役にも出演し、今後、連続ドラマ初主演作『シガテラ』を控えるいま話題の醍醐虎汰朗さんの出演が発表されました。 体力絶無で喧嘩激弱、見栄っ張りでちょっと女の子にだらしない自称・私立探偵の大夏が、喧嘩っ早くて口が悪い、しかし誰よりも正義感が強い美人ホステスの姉・美桜とバディを組み、二人の愛する地元で起きた「女子中学生連続殺傷事件」の真相を追います。原作小説の世界からそのまま飛び出してきたかのような姉弟による、正反対だけど息ぴったりな絶妙な掛け合いにも注目!また、先日名古屋・岐阜での撮影を終えた剛力さんと醍醐さんより、クランクアップ報告コメンも到着しました。 広中美桜役/剛力彩芽さん 無事、完走しました!短い期間ではありましたがとっても街の皆さんにも優しくしていただき、楽しく撮影させていただきました!本当にありがとうございました♡素敵な風景とともに、ドキドキしてホッコリもする?物語をぜひ楽しみにしていてください!私もまたゆっくり遊びに行きたいです! 広中大夏役/醍醐虎汰朗さん 広中大夏役を務めさせて頂きました。大夏はビビりでお調子者ですが、すごく真っ直ぐでピュアなキャラクターなので、多面的な魅力を感じて、そんな彼に愛着を持って演じていました。個性あふれる共演者の皆さんとのお芝居は日々刺激的で楽しかったですし、オール名古屋・岐阜ロケだったので、現地のおいしい料理を沢山食べたり、綺麗な景色が見られたり貴重な撮影期間でした。最後まで結末が分からないドキドキ感と、姉弟の絆を感じて頂ける作品となっております。劇場でお待ちしています!! 剛力彩芽さん演じる広中美桜は、岐阜の柳ケ瀬で働くホステスという役どころだったり、劇中に登場するシーンがお馴染みの場所だったりと、ゆかりのある名古屋・岐阜を舞台にした物語。地元映画で盛り上がっている今、本作からも目が離せません! メ~テレ60周年『女子大小路の名探偵』 公開2023年全国劇場公開 原作「女子大小路の名探偵」(秦建日子著・河出書房新社) 脚本秦建日子(『アンフェア』シリーズなど) 出演剛力彩芽、醍醐虎汰朗 他 製作映画『女子大小路の名探偵』製作委員会 公式サイトhttps://jyoshidaikoji-meitantei.com/ ©2023 映画『女子大小路の名探偵』製作委員会
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