【4/28公開】映画『セールス・ガールの考現学』センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督にインタビュー!
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2023.4.21fri

【4/28公開】映画『セールス・ガールの考現学』センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督にインタビュー!

第20回ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバルでグランプリに輝いた話題のモンゴル映画『セールス・ガールの考現学』が4月28日(金)より全国公開。モンゴルの都市を舞台にアダルトグッズ・ショップで働く女子大学生・サロールが、オーナー・カティアやお客さんと触れ合う中で自分らしい生き方を学んでいく成長の物語です。一足先に編集部が本作を観賞。モンゴル映画のイメージを覆す新たな挑戦とその表現力に驚き!そして、主人公が自分らしく成長していく姿を見守ると共に、自由に生きるためのヒントがいっぱいで、鑑賞後は、気づいたら観ている側の私も前向きな気持ちに!そんな大注目作の監督を務めたのは、モンゴル・アカデミー賞常連のセンゲドルジ・ジャンチブドルジ監督。本作に込められた思いや撮影の裏側を直接、監督にインタビューしました。

STORY

大学生のサロール(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル)は、怪我をしたクラスメイトの代理として、アダルトグッズ・ ショップで1カ月だけ働くことに。街角のビル半地下にある怪しげなショップには、“友達へのプレゼントに”とグッズを吟味する女性や、友人同士で訪れる客、グッズのデリバリーを頼む客も。そして、サロールの見知ったあの人も来店。ショップのオーナーは、カティア(エンフトール・オィドブジャムツ)という高級フラットに独り暮らす謎多き女性。働くうちに二人の間には不思議な友情が芽生える。カティアは昔、バレリーナとして有名だったらしく、人生の苦難や試練を数多く乗り越えてきたようで、サロールを色々な所へ連れ出していく。しだいにサロールは自分らく生きる道を考えるようになるが、あるお客とのトラブルでカティアに不信感を抱き―。

自分の内面を開いていくという世界観を題材にしたい

――少女・サロールの成長と性を題材にした本作ですが、題材にしたいと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 全てのクリエイター、芸術、アーティスト、映画監督もそうだと思いますが、自分の持っている世界を表現したいという欲を抱えていると思います。今回に関しては、サロールとカティアの役を通じて、自分の内面を開いていくという世界観を題材にしたいと思って作った映画。また、誰もが興味があって経験する“性”をテーマにし、誰もが必ず直面する真実として描きたいと思いました。

サロール役のキャスティングの決め手はきらきらとした“目”

――サロール役のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルさんは、オーディションで300人の中から選ばれたと伺いました。決め手はどこでしょうか?

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 彼女は本来、実に明るくて快活で、非常に頭の回転の速い大学生。今まで映画に出演したことがなく、変な演技や役作りがない自然体であったことなど、選んだのには複数の要因があります。その中でも決め手になったのは“目”。目の力が強く、後半のきらきらとした目が彼女の本来の目なんです。前半の内向的な目のほうが演技。元々明るい子が暗い目を演技ですることはできますが、元々暗い子が後半の明るい目をする演技は非常に不自然になってしまう。そういったところで、最終的に自分の道を開いていくサロールの目を持つ彼女を選びました。

――バヤルツェツェグ・バヤルジャルガルさんは、初出演・主演とのことでしたが、初めてとは思えないほど魅力的でした。現場でのチームの雰囲気はいかがでしたでしょうか。また、アドバイスや演出などされたのでしょうか?

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 撮影の時期は、ちょうどコロナ禍の時期で非常に厳しい感染対策のもとで行われました。自由に家に帰ることもできず、みんな同じ所に集まって、泊まって、そしてまた撮影に行くという環境でした。そのため、スタッフと役者の間の団結力が強まりました。演出は、監督自身が演出をつけるようなことはあまりなく、できる限り自然体で演じてほしいと思っていました。観た人の目に彼女がすごく魅力的に映ったのだとしたら、彼女が自然体で演技をすることができているからだと思います。

ヘッドフォンを付けて音楽を聴く時だけが自分の世界

――バスの車内でサロールが歌い出したり、ホテルでの音楽の使い方、お店からの帰り道、エンディングと音楽の合わせ方がとても印象的でした。音楽を合わせる際に意識したことは何でしょうか?

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 音楽について着目してくださって、すごくうれしいです。音楽は演出としても一番こだわった部分で、サロールにとってヘッドフォンを付けて音楽を聴く時だけが自分の世界なんです。内向的な前半の彼女にとっても唯一の友人というのが音楽で、ヘッドフォンをした時だけ自分の世界が開かれる。そこで実際に歌い手が現れる演出も入れたり、彼女の内面の世界を描くのに彼の音楽が非常にうまく合ったとみなさんに伝わったのでしたら、すごくうれしいです。

――音楽をドゥルグーン・バヤスガランさんにお願いされたきっかけは何だったのでしょうか?

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 今回、現代の若者たちが聴くロックやポップなど様々な音楽を聴きました。その中で彼が突出して良かったのは、彼の歌う世界観もそうですし、彼自身がイギリスで長く生活していたので英語の発音もすごく自然体で、英語で歌うことに無理がない。彼が歌うとスピリットの精霊のようなものを纏っているかのような感じがするところ、いわゆる歌謡曲のサビの部分を繰り返すような歌ではなく、吟遊詩人のように歌うところなど、そういったところが決め手となりました。

言葉がわからなくても、観てちゃんと理解できるように心がけている

――芸術的でありながら、現状のモンゴルを映し出すリアリティも織り交ぜられているように感じた本作。モンゴルの若い人々も共感されていました。今回リアリティさを追求する上で大切にした点、欠かせなかったものはどんなところでしょうか?

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 芸術を持ちつつ、リアリティをどう保持するかに関して、やはりたくさん考えています。できる限りセリフで説明するのではなく、映像表現の映画ですから、映像表現でリアリティを見せるということをすごく大切にしています。例えて言うならば、言葉がわからなくても、観てちゃんと理解できるようにと心がけていました。

自分の人生や哲学にとってもすごく大切な言葉を本作に込めた

――カティアが放つ名言が自分らしく生きるためのヒントとなり、心に刺さりました。監督自身が人生において大切にしている言葉を教えてください。

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 カティアが放った「アダルトショップはポルノじゃなくて薬局よ」や、「幸せというのはそれだけあっても見えてこない、苦しみがあってこそ幸せが見えてくる」など、この言葉がまさに私の人生の哲学の中でいつも持っているべき言葉だと思っています。幸せであっても次に苦しみが来て、苦しみの後にまた幸せが来る、これが人生であって苦しみはいつまでも続かない。いま苦しくても次の日には幸せが来るかもしれない、そういうふうに思って生きること、これが自分の人生や哲学にとってもすごく大切。

人間の複雑で繊細な内面を描く映画を作り続けたい

――今後の映画制作にあたり、どのようなものを作っていきたいですか?

センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督 心の中にインスピレーションの波があって、テーマが心に浮かんだ時、映画が生まれます。人間の複雑で繊細な内面を描く映画を作り続けたいです。ヘンテコな映画も作ってみたいですね。モンゴルの若者のライフスタイルと人生観に少しでも触れていただけるとうれしいです。ありがとうございました。

自分らしい生き方って、大人でもわからなくなる時がある。そんな自分の解放の仕方や、自分らしく生きることを学んでいく、グローイング・アップ・ストーリーは必見!自分自身も見つめ直しながら、サロールの成長をぜひ劇場で見届けてはいかがでしょうか。

セールス・ガールの考現学

公開日
4月28日(金)よりセンチュリーシネマ他で公開!
監督・脚本・プロデューサー
センゲドルジ・ジャンチブドルジ
音楽
ドゥルグーン・バヤスガラン(Magnolian)
出演
バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル、エンフトール・オィドブジャムツ 他
公式サイト
http://www.zaziefilms.com/salesgirl/
©2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures


※掲載内容は2023年3月時点の情報です

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【4/28公開】映画『セールス・ガールの考現学』センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督にインタビュー!

WRITER

Mai Shimomura

Mai Shimomura

岐阜県出身。スタジオやブライダルでの 撮影経験を6年経て、編集者へ転身。 カメラと映画が好きなミーハー女子。 素敵な出会いを写真に記録しながら、 みんなの心に届くモノを発信したい。

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