「一緒に聴いてくれている、そんな気持ちになりました」故・坂本龍一さんとのやりとり
――川村元気さんとは、『舞妓さんちのまかないさん』でもご一緒されてたと思うんですが、今回の作品に川村さんが加わったことによる影響はございますか?
もともと、実は『怪物』の制作が先で、コロナ禍の影響で一旦ストップになっちゃったんです。それで、再開するまでに川村さんから「何かドラマやりませんか?」と声をかけていただき、『舞妓さんちのまかないさん』が始まりました。最初、僕の周りの人たちは、大丈夫なのか?って感じで(笑)“水と油”なんじゃないかって。でも、意外とうまくいきましたね。何でかはよく分かってないんですけど。
いつもプロデューサーに意見をもらって修正していく作業をしているんですが、川村さんの意見って、非常に細かいんです。「このシーンのカット尻、1秒半短くしたほうがいい」だとか。“うるせえよ”って(笑) そこは監督の領分だろっていうところに踏み込んだ感想が届くので、見ないんですけど。見ないまま、自分で直したあとに一応確認しとくと、八割くらい同じなんですよね。そういう価値観を共有してるんだなと思いました。だから、腹が立ったり、カチンとくることとか、なかった。そういう意味でも、良い関係をつくれたと思ってます。
――今回、音楽を坂本龍一さんが担当されました。オリジナルで2曲作っていただいて、あとは既存曲を使用されたとのことですが、坂本さんとどのようなやりとりを行なわれましたか?
病状のことも聞いていたので、負担になるのは申し訳ないと思いながら、坂本さんに頼めないのであれば、今回、音楽はなしにして、音楽室に響く音だけで押し切ろうと思ってたんです。でも、どうしても、夜の湖のシーンには、坂本さんの曲を入れたくて。
撮影後、編集したものに坂本さんの既存曲を当てて、お手紙を添えて届けました。返事もこない覚悟でいたんですが、すぐにお手紙が届いて。「とても面白かったです。お引き受けします」と。「ただ、映画全体の音楽を作る体力が残っていないので難しいのですが、観終わってイメージできたものが1、2曲あるので、まずそれを形にしてみますので、できたらお渡しします」という手紙でした。
音源が届いて、ドキドキしながらそれを当てて。残りの曲は、昨年発表されたアルバム『12』から使用してもいいとのことだったので、そこから選ばせていただきました。
仮当ての段階から、最後の子どもたちのシーンには“この曲を”と思っていた曲があったんです。2人の気持ちに寄り添って、2人の未来を祝福するような曲だと思っていて。カンヌ上映の時、最後にあの曲が会場に流れてエンドロールが始まったとき、「あぁよかったな」と思いました。あの場には居ていただけませんでしたが、一緒に聴いてくれている、そんな気持ちになりました。
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「日常の至るところで姿を出す“怪物”を表現しよう」
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