すずというキャラクターは、どのように作られていったんでしょうか?
<U>の世界の中心にいる人気者が、現実でどんな人なのかを想像したときに、絶対に東京にはいない人だと思ったんですね。インターネットの中心と真反対の、自然がきれいな場所で、橋の上にぽつんと佇んでいるような、おとなしい女の子が実は華やかなベルの正体だというのが、すごく面白いと思ったんです。僕は『美女と野獣』がすごく好きなんですけど、何が好きって野獣が好きなんですよね。暴力的な面がありながら、その内側には別の心があるという二面性が好きで。『美女と野獣』って、18世紀のフランスの話ですけど、「美女は美女」でしかなくて、もっと美女にも二面性があるんじゃないかと思ったんですよ。じゃあ現代における「美女」って何なのかを考えたときに、単純に顔やスタイルがいいということが美女ではない、と思ったんです。どういう風に生きて、いろんなことを乗り越えて、それを乗り越えた証が美女にさせる。守らないといけないものを絶対に守る、みたいな人が美女だと思ったんです。
最後のシーンで、すずが泥だらけで立ち向かう美しさを描いて、映画の帰結したところまでいったので、『美女と野獣』を現代にアップデートできたのかなと思いました。「現代にとっての美女とは何か?野獣とは何か?」を考えられるように、作品を切り口にして時代の変化を表現できるというのが、古典作品を扱ういいところですよね。