作中で登場するインターネット空間<U>は、『サマーウォーズ』の仮想空間<OZ>がスケールアップしたような世界でした。<U>というインターネット都市はどのように構想したんでしょうか?
『サマーウォーズ』の<OZ>は、世界で10億人が参加しているインターネットを想定して、しかも若い人が中心に参加しているものを想像して作ったんです。なので、カラフルな感じでデザインしたんですよね。そこから10年経って、Facebookの登録者が12億人を突破して、<OZ>が抜かれちゃったんですよ。ついに現実が虚構を乗り越えた!と(笑)。それで50億人が参加するインターネットの<U>を考えたときに、未来というものを反映しながら作りたいなと思ったんです。サマーウォーズの時と違うのは、インターネットの立ち位置が昔と今とで違っていて、今はもっと複雑になっているし、誹謗中傷などの社会問題がインターネットの代名詞みたいになってしまっていて。良い面だけじゃなくて、そういった問題になっているような悪い面もしっかりと反映された、もう一つの世界ですよね。その「もう一つの世界」という実感をもってもらえるような空間にしたいというコンセプトでデザインをお願いしたのが、エリック・ウォンという、イギリスに住む当時27歳の建築家なんです。
今回のお話が「インターネットで才能が花開く」という内容なので、実際にインターネットの中にすごい才能がいないかって探したんですよね。それですごくいいポートフォリオを見つけて話を聞いたら、ロンドンに住む若い建築家だったんです。“架空建築”という概念的な建築をやられている方で、<U>の空間も、現実ではありえない建築なんだけど、どこか存在するかもしれない感じもあって。そんな出会いがあって、それまで全く接点がなかったのに一緒に作品を作って、その世界を構築してしまうって、すごくないですか?そんなインターネットの可能性を作品で体現できたのが良かったですよね。
CGアニメーションも印象的だった今作ですが、CGと手書きの使い分けはどのようにされていたんでしょうか。
手書きとCGで作品のトーンを合わせるために、CGの方をシェーディングで手書きの方に合わせていきました。<U>の世界はCGで、現実の世界は手書きで、と分けているんだけど、そうやってコンセプチュアルに分かれている作品は、世界のアニメーション作品を見てもほとんどないと思います。大変だったのは、ベルと竜の気持ちがお互いに通じていく様子をCGでどう表現するか。日本のCGアニメ映画でのレベルでいうと、この作品は壁を突破したと思っています。その裏には大変な労力があって、才能あるアニメーターの人たちがたくさん参加してくれて、何度もリテイクを重ねていいものに仕上げてくれたので、このレベルまで引っ張り上げることができました。莫大な費用もかかっていまして、ヒットしてもらわないと困っちゃいますね(笑)。でもそれによって初めて表現が一つ、二つ、と高みへ上がることができました。