2024.5.22wed
落語家・月亭方正さん『噺家生活15周年記念 月亭方正 独演会』開催に向けた特別インタビューを掲載!
2008年5月、テレビタレント「山崎邦正」から噺家へと転身した月亭方正さん。2013年1月より芸名を本名・山崎邦正から、高座名「月亭方正」に改名されています。
噺家生活15周年を記念して「噺家生活15周年記念 月亭方正 独演会」が、大阪・東京・名古屋にて開催。
名古屋公演は、6月3日(月)「Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール」にて開催されます! 名古屋公演のゲストには、笑福亭鶴瓶さんが登壇。
今回、周年を迎えた月亭方正さんに特別インタビュー! 落語への思いや今後の展望など、たっぷりと語っていただきました。
記事を読んで、ぜひ名古屋公演へ行ってみてくださいね♪
噺家生活15周年を迎えた今の気持ち
――本日は名古屋プロモーションということで、まずは名古屋の思い出から教えてください。
若いころ、番組を持っていました。ロケしていたんですけど、暑いっていう印象があります。関西も暑くて、特に京都は盆地やからわかりやすく暑いんだけど、名古屋はなんでこんなに暑いんだろうって思っていましたね。
――名古屋の好きな食べ物や好きな場所はありますか。
ウナギがとってもおいしいですね。僕の中で、各地おいしいものがあるんですよ。例えば東京やったら寿司。やっぱり江戸前寿司にはどこも勝てない。大阪は串カツ。焼きそばとか粉もんは、やっぱり大阪ですね。それで、ウナギはやっぱり名古屋がおいしい。
テレビ局の方に特別に教えてもらったお店が、めっちゃうまかった! 名古屋に来たらその店へ行きたいなといつも思うんだけど、行けてないんですよ。今日もすぐ帰るので、行けません。
――知る人ぞ知る名店なんですね。ぜひ次回はお店へ行けるといいですね。あらためまして、噺家生活15周年おめでとうございます! 率直な今のお気持ちはいかがでしょうか。
特別感は正直なくて、15年経ってやっとこう身に付いてきたというか、板についてきたというか、自分の尺度になってきた感じです。“落語という精神的な着物を着る”、身の丈にやっと合ってきたという時ですね。何事も20年はかかると思っているんです。僕はテレビの仕事を20歳からやっていて、自分でも言うのもなんですけど、40歳ぐらいの時はテレビのプロになったなって思ったんですよ。それはなんでかと言うと、テレビ番組『アッコにおまかせ!』で、勝俣州和さんが出る日に病欠になって、僕が代わりに出たんです。何の用意もなしで現場に行っても、対応できたんですよ。それができるまでに20年ぐらいかかりました。
どんな道でもおそらく20年が基準になると思います。あと、20年の時は、なんか楽になってくる。今まですごい緊張してて、いろいろと考えていたことが、 20年になると、テレビの放送30分前に「出てくれ」と言われて出ても楽しめる。
落語がやっとそういう段階のところが、やっと見えてきました。今でも本番前は、ピリピリして何も食べられないんです。でも、それがあと5年して20年になったら、きっと食べられるのかな。人間、大人(成人)になるにも、20年かかるじゃないですか。今は15周年だから、15歳は人間で言ったら思春期。突っ走ってる時が今だと思っています。
――方正さんが落語家に転身されたご経緯などを、記事や他のインタビューで拝見していまして、その中で「本気だからやり遂げられた」というような当時の方正さんのお言葉が強く印象に残りました。この15年間を振り返った時に、どんな言葉がしっくりきますか。
実際に公演に来たら、そこでいろいろと皆さん感じると思いますが、そこの舞台には僕だけでなく、噺家たちの努力や思いが、詰まっているんですよ。僕は落語をやる前は、結構刹那的に生きてましたけど、落語をやり始めてから、落語のことをすごく考えるようになりました。落語の稽古とか、落語のネタ作りとか、寝る前には絶対にネタをくる(面白くする)し。それらを振り返った時に、月亭八方師匠二人で話す機会があった時に、師匠へ「自分自身がこんなに真面目な人間やと思ってなかったですわ。稽古とか一生懸命やるし」って言ったら、師匠が「基本的に真面目なんかわからんけど、お前は落語が好きやねん。だから、自分で真面目って言ってるけど、好きやからできんねん。俺も阪神好きやねんな。ネタ覚えなあかんけど、阪神のことやったらバーッとそっちへ行ってまうしな。」と、言われたんですよ。その時に「俺、落語が好きなんや」というのを、再確認したんですよね。自分で思うのと、師匠に言われるのとでは重みが違うというか。それが印象に残っていますね。
――落語家としての道を歩むと決められた時は、ものすごい覚悟があったと思います。そこからの道のりは、決して楽ではなかったかと思いますが、師匠や周りの人からの印象的なメッセージやエピソードは他にありますか。
第三者の方っていうのは、 順風満帆でやっていたテレビタレントの仕事を辞めて、「すごい勇気ですね」とか言ってくださるんですよ。でも、自分の中ではお笑い・芸人というカテゴリーの中にやりたいことがあるんです。やりたいことが見つかって、そのやりたいことをやるためには、ずっとこれ(テレビの仕事)を持っていると持てないから、手放して、落語を取ったっていうだけなんです。
元々、人に言われて云々っていうのはないですね。人に相談したことがなくて。だからこそ、自分で注意しているのは、“頑固になったらあかん”っていうことです。「じゃあ自分で全部決めてきたんですか」と聞かれたらそうでもなくて。本はすごく読んでいます。本は自分の中に取り込む時に、自分流に変換できるから、人の話よりも重たくなくて、自分の中にすごく入ってくるんです。
――ご自身でも書籍をご出版されていますね。
これまで2冊出しています。落語を聞かずに人生を終える人が大半だから、本でどういうアクセスがあるのかなということで、本を出しましたね。「素晴らしい芸能の落語に興味を持ってほしい。日本人に生まれたなら、みんな落語を知らないともったいないよ」っていうことを僕がアナウンスできたらいいなっていうのが本ですね。
でも、世間ってそういう思いだけじゃ伝わらないんですよね。今は、まず手に取ってもらうことが大事やなと考えています。なので、次は処世術のような、僕の人生の岐路でどういう考えをしたとか、皆さんが学べるようなもの。「方正はこうやって転職して、落語でも評価を得ていってんねやろ」っていうような内容をメインにして、あとは落語を紐付けていって、本出したいなと考えています。幅が狭いと、落語が好きな人しか手に取らないんですよね。僕と従来の噺家さんが違うのは、テレビに出ていて有名という点なので、皆さんが手に取りやすいようにしていかなあかんなって感じています。
――テレビのご出演が多い分、方正さん発信で落語をいろいろな人に知ってもらう、文化を盛り上げるみたいな感覚に近いのでしょうか。
落語だけやったら振り向かないんですよ。僕はテレビ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』という現場で、上司と部下がおって、ド真ん中の僕はパイプ的な存在でした。その僕がどういう風に立ち回ってきたのかっていうテーマだと、みんなが手に取って、学ぼうとする。本を読むというのは、お金を出して、時間を使うことなので、みんなは何かを得ようとして手に取るんですよね。だから、本はそういうものの発信。それに、どうやって落語を紐付けようかと考えています。
――落語というものを、よりいろいろな人に知ってもらって楽しんでもらうっていうことになると、いわゆるネタの内容も、従来の落語にちょっと新しいエッセンスを取り入れられているんでしょうか。
人間として変わらないもの、普遍的なものっていうのは絶対にあって、それは江戸時代であろうが、未来であろうが、絶対に変わらないんですよ。それが基本的に落語には流れてる。例えば、子どもってかわいいですよね。「子どもは夫婦をつなぎ止めるもの」「子は鎹(かすがい)」と言いますけど、そういうのは変わらない。あとは、おじいちゃんやおばあちゃんには知恵がありますよね。女の人は優しいですよね、男性は強いですよねっていう、普遍的な人間の核は変わらない。背景・時代が変わるだけなんですよ。
あと、やっぱりそこに注意しているのは、ギャグというか、「くすぐり」と言うんですけど、そういうのって生物で、その時代のものがあるんです。このパターンよりも、こういう言い方の方が今の時代だとか、今の人にはわかりやすいっていうのは、自分で再編しています。
――その感覚は、自分でぴったりハマッてくるものなのでしょうか。
それが噺家さんのセンスになりますね。例えば、バナナの皮が道に落ちているとします。人が歩いてきて、そのバナナの皮を踏んで滑ると、見ていたみんなが笑う。それをずっとやっているとある日、もうみんな笑わへんようになる。じゃあ、どうやったらまた笑うようになったか。次は、素通りしたら笑うようになる。それでまた踏んづけて、滑ったら笑う。そこにあるものと、やることは変わっていない。でも、時代が変わると、その時の面白い、面白くないっていうのは変わる。同じくすぐりでも、時代によって見せ方で変わるんですよ。もう本当に、センスと感覚で、その噺家の感覚だから面白いんです。
――流行っていることや世の中の流れをキャッチして考える、みたいな感覚でしょうか。
そこまでは敏感になっていなくて、いろいろと情報を仕入れて云々っていうことを特にやってるわけではないです。ただ、自分が面白いと思うことが世間とずれていたらダメですね。
――リアルな場所で、リアルな人へ向けてのご公演だと、タイミングや声色など、全部が違ってくるのでしょうか。
はい。落語を観に来てほしいっていうのは、そこでそれをリアルに体験したら、何かを感じるだろうし、何か得るものがあると思うからなんです。
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