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本作品の題材でもあるLGBTQについて、改めて気付いたことや学んだことはありましたか?

宮沢さん  もともと僕の周りに、同性愛者の友人がいたので、生きづらさというか辛さというものをそれなりに感じていたし、自分がそういう役を演じてみるとなると、僕の想像よりもはるかに生きづらい世界というものがありましたね。それと毎日直面していると思うと、本当に心がしんどかったというのが正直なところです。自分の想像以上の辛さを今回体感させてもらって、いくら自分がわかっているつもりでも、もちろん全部を体験できたと思ってはいないですが、少しでも自分で経験したことによって、人として大きくなれたというか。もっと自分に正直になりたいなって思えました。それは『his』という作品で、迅という人間を生きられたからこそ感じられたことです。
藤原さん  僕もその気持ち、すごくわかります。確かに、様々なことを勉強できて、『his』が終わってから10カ月経って、気付くことがいっぱいありました。まだまだ世の中に古い価値観がたくさん残っていて、「これを迅と渚が見たら傷つくだろうな」って思うことが、山ほどあふれているように感じます。僕自身は渚を演じたことで、自分が本当に着たい服を着たり、好きな色に気付けたり、身に付けたり、花を家に飾ったり…。自分の気持ちに素直になれるようになりましたね。渚を演じて自分が変わりました。それが一番大きいですね。あとは、自分の表と裏がなくなったというか。さっきこの場所に入ってきた時に、すごい笑顔だったのも、渚を演じたからこそ、ああいう人間になれたのだと思っていますね。

どういった気持ちで撮影に挑んだのか、また今の心境を教えてください

宮沢さん  最初に役をいただいたときは、「果たして迅になれるのだろうか」「迅の気持ちを理解して、渚を好きになれるのだろうか」という不安もありましたし、それに勝る楽しみもありましたね。先ほども言ったように、僕の周りには同性愛者の友人もいるし、僕は男子校の出身でそういう仲間と過ごしていたり、それが当たり前だと思えた環境下にいたので、大きくなって社会に出てみたら、それは普通のことじゃないし、偏見や差別の目で見られている友人を見て、彼らのために何かをしてあげたいじゃないですけど、自分のためでもあったし、この現状を変えたいという風に思っていました。それが今回の出演で、ようやくできるかもしれないっていう希望があって。それが、すべてのプレッシャーや不安を一回忘れさせてくれるというか。だからこそ、前向きにこの作品を受け止めようと立ち向かえた自分がいました。今、全部終わって、作品として世の中に出る訳ですが、どちらかと言うと、今の方がプレッシャーを感じているかもしれません(笑)。自分たちが命をかけて作ったものが、皆さんにどうやって受け入れられていくか。逆を言えば、皆さんが「良い映画だったよね」って、みんなが「素晴らしい」っていう風になる方が怖くて。色んな意見がぶつかって、「俺はこう思う」「私はこう思う」「いや絶対こうでしょ」とか、ぶつかり合ってくれる作品になれば良いと思っています。何も残らないというか、皆さんが観て話題にすら上がらない方が怖いかも…。そんなことないと思いますが(笑)。人伝えで、どんどん広がっていけば良いなって思います。
藤原さん  そうですね、僕も撮影当時のプレッシャーはありましたが、今感じるプレッシャーというのは、当時よりも大きいかもしれませんね。差別的な目で見ていないよと思っていても、ちょっとした言葉で相手が傷つく要素がたくさんあって。そういうことって、言っている本人は気付かないので、自分がまだ古い価値観にいるんじゃないかとか、迅と渚が聞いていたら傷つくようなことを、僕らが言ってしまっているんじゃないかとか、常に僕らも敏感になっていて。果たしてこれは、本当に映画を観た人の人生を豊かにできるのか、とかいろいろ考えますね。

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舞台裏は、二人で10日間の同棲生活!
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